太陽政策見直し、親企業路線 韓国野党が右傾化ポーズ
韓国の左派系第1野党・民主党が、対北朝鮮の看板政策だった太陽政策を見直す考えを示したり、親大企業政策を検討するなど、このところ“右傾化”が目立っている。とはいえ6月の地方選など選挙を意識した「戦略的変身」の性格が濃く、理念的な軸足まで「右」に移す覚悟まではなさそうだ。
(ソウル・上田勇実)
「安新党」人気も影響か
民主党の金ハンギル代表(党首)は今月、新年の記者会見で「国民統合的な対北政策を準備する」と述べ、同党のシンクタンクはその後すぐに北朝鮮に融和的ないわゆる太陽政策の功罪を検証し、特に北朝鮮に核開発を許した点などから政策見直しを進める意向を明らかにした。
また金代表は会見で「民主党は北朝鮮の人権問題などに対しても直視している。北朝鮮の人権と民生を改善させるための『北朝鮮人権民生法』を党レベルでまとめる」とも述べた。北朝鮮の人権弾圧を事実上見て見ぬふりをしてきた同党は、北人権法の制定を何年も渋ってきたが、ナンバー2張成沢氏の粛清などショッキングな出来事もあって、さすがに「見て見ぬふり」とはいかなかったようだ。
民主党は経済政策でも“右傾化”している。韓国メディアは同党が分配一辺倒から成長をより重視し、親零細・中小一辺倒から親大企業をより重視する路線に転換する方針を固めたと報じた。
民主党がこのように対北・経済で相次いで「変わった姿」をアピールできるのは、金代表が、金大中元大統領に近かった、もともとの地盤・全羅道(南西部)出身のグループや盧武鉉元大統領に近い親盧グループとは距離を置き、既存の路線から比較的自由な立場にいられることが何より大きい。
だが、その“右傾化”の真意をめぐる大方の見方は「本気ではなく、選挙用の戦略」というものだ。本気で右に舵(かじ)を切れば、党内の理念的左派が黙っておらず、党内分裂を招く恐れがある。“右傾化”はどこまでも6月に統一地方選を控え、支持率低迷が続く現状を打破するカンフル剤の役目というわけだ。
その意味では今回の民主党の“右傾化”は、朴槿恵大統領の選挙戦略にあやかっていると言えなくもない。朴氏は中道票取り込みに向けて大統領選のかなり前から福祉重視などを表明したり、経済民主化を公約に掲げるなど、保守本流の政治家としてはかなり“左傾化”したが、これが左派系候補との差別化を難しくし、功を奏した面があった。民主党が中道票を取り込んで選挙に勝つには、今度は逆に“右傾化”しなければならない。
もう一つ民主党を“右傾化”させている背景には、一昨年の大統領選で野党系候補一本化の際に候補を辞退した安哲秀議員(無所属)の人気がある。
安議員は、既存政治からの脱却を訴え続け、全体的には左派路線でありながら懸案によっては保守的でもあり、政治離れした若者や中道層から高い支持を得ている。民主党と安議員は政治志向が似通っているが、安議員は地方選に向け新党旗揚げを宣言しており、政党支持率では民主党が「安新党」に負ける傾向にある。民主党としては神経を尖(とが)らせざるを得ない。
今のところ「安新党」は、民主党による候補一本化の呼び掛けに応じる気配を見せていないため、双方は反保守・中道票の取り合いをする可能性がある。民主党としては「安新党」との競合を前に新たな「コンテンツ」が必要な状況である。