「母乳」は女性蔑視かーオーストリアから
地球だより
英国のブライトン、サセックス両大学クリニックの産科病棟関係者は今後、出産に関して性的に中立なジェンダーニュートラルな用語を使用しなければならなくなったという。
両クリニックに従事する助産師と産婦人科の医師は「母乳(ブレスト・ミルク)」を、「ヒューマン・ミルク(あえて訳せば「人の乳」)」か「授乳中の親からのミルク」と呼ばなければならない。ブレストが女性の胸をイメージさせることから、女性蔑視に当たるということのようだ。
それだけではない。授乳の際も「ブレスト・フィーディング(胸の栄養を与える)」という伝統的な表現を止(や)め、胸に当たる中性的な言葉「チェスト」を使わなければならない。その上、「母親」は「出産する親」に、「父親」は「親」ないし「共同養育者」に変えるべきだという。
オーストリアではそこまでジェンダーニュートラルな用語は広がっていないが、気になる変化が起き始めている。伝統的なドイツ語のあいさつ「グリュス・ゴット(神に宜しく、神のご加護を)」を避けるようになってきたのだ。「神のご加護を」と言われて、気分を害する無神論者が若い世代に増えてきているというのがその理由のようだ。
「初めに言葉があった。全ては言葉から始まった」という聖句は、新約聖書の「ヨハネによる福音書」の有名な書き出し部分だ。神の言葉から森羅万象が創造されたという意味だが、その言葉を自身の都合のいいように書き換えようとする人々が増えてきている。
(O)