半地下に住むワケー韓国から


地球だより

 カンヌ国際映画祭で韓国映画として初めて作品賞を受賞し、日本でも話題になった「パラサイト 半地下の家族」は、貧しい家族が裕福な家の家庭教師に招かれたことから物語が始まる格差をテーマにした映画だ。

 主人公の家族が住む半地下と呼ばれる居住空間は韓国にまだ数多く存在する。ビラと呼ばれる4、5階建て多世帯住宅の1階の下半分と地下1階の上半分をつないだのが半地下で、初めて韓国を訪れた時、その存在に驚いた。

 80年代にソウルへの人口集中が激しくなったのを契機に、半地下への居住が認可されたのが始まりだ。

 だが、窓を開ければ外を行き交う人々の足元がすぐ目の前に見えるほどの「低さ」が難点で、日当たりや風通しの悪さからお世辞にも住み心地が良いとは言えない。

 家賃が安く、地方から上京して一人暮らしをしたり、金銭的に余裕のない世帯が住むことが多い。住人には「学がないから貧しい」というレッテルまで貼られることもある。

 ただ、ある程度の財を成した後に半地下に引っ越す逆戻りのケースもある。

 実際に聞いた話だが、高校に通う子供に掛かる法外な課外教育費を捻出するため、持ち家のマンションを売って賃貸の半地下生活に甘んじることにしたという人がいて、よくそこまで決断できるなあと感心したものだ。林立する高層マンション群に隠れるようにして存在する半地下にはさまざまな人間ドラマが詰まっているのだろう。

(U)