ユートピアのような時短論争-フィンランドから


地球だより

 世界最年少の女性首相として何かと注目を集めているサンナ・マリン首相だが、8月下旬、世界のメディアを騒がせる出来事があった。世界のメディアが「フィンランドのマリン首相が週休3日制、1日6時間労働を計画、検討中」と報じ、首相は「あくまでもアイデアの段階にすぎない」と驚き、政府として何ら議題にも挙がっていないと報道内容を否定した。

 しかし、このことがきっかけに政府与党の一つ、左派連合のペコネン社会保健相は「任期期間中に、公共部門の企業や組織の勤務時間短縮を試すべきだ」と述べるとともに、「労働時間短縮は、従業員の寿命を延ばし雇用創出のための前向きな環境を確立するために必要だ」と発言。

 一方、ビジネスセクターと経済政策の研究機関「ETLA」は、「これはユートピアのように聞こえるが、無謀な考えであり、突き進めばフィンランドの経済を破壊しかねない」と警告するなど、「労働時間短縮は可能か否か」の賛否両論の議論が起こりだした。

 マリン首相個人としては、「人々はもっと家族や愛する人、趣味などに時間を費やすべきだ」との考えを持っており、以前に交通・通信担当相の時にも、労働時間短縮を目指すとの考えを明らかにしていた。

 社会民主党の党大会において、労働時間短縮の実現のためにマリン首相がビジョンとロードマップを作成する必要性を説いたことで、メディアの早とちりにつながったようだ。

(Y)