「神に出会う人」が増えるーベルギーから
地球だより
ベルギーのローマ・カトリック教会では過去10年間、成人になった後、神を発見し、洗礼を受ける人が増えているという。バチカンニュースが8月24日、報じた。新型コロナウイルスの感染拡大で自身の命ばかりか、社会、国家の未来に対して不安が高まっている。これまで忘れていた神の存在について考え直し、教会の門を叩(たた)く人が増えてきたのだろうか。
新型コロナが猛威を振るう今年、18歳以上の成人305人が洗礼を受けたという。前年比で61人の増加だ。数はまだ少ないものの、聖職者の性犯罪をはじめ不祥事が絶えない教会にとっては、良い知らせだろう。
次は「なぜ洗礼を受けたのか」と聞いてみたい衝動に駆られるが、成人洗礼の場合、さまざまな理由が考えられる。死の床で神の赦(ゆる)しを受け、カトリック信者として人生を閉じる政治家の話はよく聞く。キューバの独裁者、フィデル・カストロは、死の直前にローマ・カトリック教会の聖職者から病者の塗油(終油の秘蹟)を受けた。
ここでは、「死の床」ではなく、「人生の最中」に神を求め、洗礼を受ける成人のことだ。情報が氾濫し、価値の相対化が進む現代社会では、虚無主義に陥る人も少なくない。
モーセがシナイの山で神の声を聞くといったドラマチックな出会いより、日常生活の中でちょっとした出会いや言葉から神を感じ、神を考える機会となるということは十分あり得るし、病気になって考え出す人もいるだろう。そこに何らかの共通点があるとすれば、人生で最高に乗っている時ではなく、弱っている時、落ち込んでいる時に神と出会う人が多いということだ。
(O)