シングルマザーの奮闘-韓国から


地球だより

 40年くらい前、韓国の地方にある小学校での出来事だ。教室で児童たちの筆箱がなくなる“事件”が起こり、先生が女子児童の目の前に立ち、いきなり犯人扱いした。

 理由は「お父さんがいない子だから」。女子児童は10歳で父親を病で亡くし、その後、母親が雑貨商を営みながら女手一つで4人の子供を育てていた。
「当時は韓国も貧しく、社会にシングルマザーの家庭を差別する雰囲気があった」と、知人の韓国人女性が実体験を語ってくれた。

 その後、高度経済成長や民主化、グローバル意識の広がりなどでシングルマザーも様変わりしている。先日、新たに当選した議員たちを迎えて国会が始まったが、逆境を乗り越え当選を果たしたシングルマザーの金美愛議員(50)が話題だ。

 中学を卒業し工場で働いた後、小さな店を開いたが、不当な理由で営業停止に追い込まれた。一念発起し28歳で大学の夜学に通い、30代前半で見事、司法試験に合格。主に国選弁護士として働きながら姉の子など幼児3人を養子にもらい育て上げた。こんなパワフルなシングルマザーもいる。

 かつてのシングルマザーへの言われなき差別は、女性の社会進出ではるか遠い昔話になった。ただ、今も昔も共通するのは、父親がいないため子供につらい思いをさせてはいまいか、母親が不安になることだという。

 韓国では世間体を気にし過ぎてしまう傾向があり、「父親不在」が精神面でもシングルマザーに重くのしかかっている。
(U)