新型コロナで「現金」離れが加速


地球だより

 アルプスの小国スイスの国民は現金を愛する。「現金だけが本物だ」という信念が社会の隅々にまで定着している国柄だ。その国民に対し、新型コロナウイルスは現金離れを強いてきているという。スイス公共放送協会のウェブサイト「スイスインフォ」が6日、報じた。

 新型コロナの感染が広がり、スイスでも感染者、死者数が増加すると、ショッピングセンターや店舗では店員の感染の恐れがある紙幣や小銭による現金支払いを拒否し、カード払いを要求するようになってきた。現金にはウイルスが付着している危険性があるからだ。その結果、非現金・非接触型決済が加速してきた。現金自動預払機(ATM)の利用率を見ても、その傾向が読み取れる。スイス郵便の金融部門「ポストファイナンス」では3月16日~4月14日のATMによる引き出しが前年同期に比べ48・4%減ったという。

 「カードを使った非現金決済には暗証番号が必要だが、番号入力端末でのウイルス感染を避けるため、スイスの全カードサービス事業者は4月初めから暗証番号不要の決済限度額を40フラン(約4300円)から80フランに引き上げている」(スイスインフォ)といった具合だ。今後はスマホ決済や非接触型決済の支払いが増えていくと予測されている。

 中国はカード払いが進んでいる国だ。国民のほとんどがカードなどで支払いを済ます国から飛んできた新型コロナがスイスでも感染を広めてきた。そこで感染防止の一環として、スイス国民は今、長年親しんできた現金から別れを告げざるを得なくなってきたわけだ。

(O)