フランスの政治家とプライバシー


地球だより

 フランスは、たとえ政治家などの公人といえども私生活のプライバシーは守られるべきだという暗黙の慣習があった。そのため、ミッテラン元大統領が在任中、隠し子がいることが発覚し、マスコミに質問された時も「それが何か?」と受け流した。

 日本びいきのシラク元大統領にも隠し子騒動があったが、それほど大きな問題にはならなかった。ところが最近、現職のオランド大統領が、パリに住むフランス女優のアパートに足しげく通っていることが週刊誌で報道され、大きな話題になっている。

 政治家、それも一国の大統領の私生活について静観する構えだったフランスのマスコミが変化したのは、2007年に大統領に就任したサルコジ氏の一連の離婚、結婚報道だった。

 サルコジ氏は就任早々、当時妻だったセシリアさんと離婚し、間もなく元トップモデルのカーラ・ブルーニさんと結婚した。その時は大統領自らが公の場で、カーラさんと交際を始めたことを公表し、大統領自らが私生活を明らかにするという過去にない態度を取って話題になった。

 オランド大統領は現在、ジャーナリストのバレリー・トリルベレールさんと事実婚関係にある。バレリーさんは大統領府に自分の執務室を準備させ、大統領夫人として公務をこなす毎日だが、オランド氏と女優のスキャンダルが影を落としている。

 フランスのマスコミは、公人や有名人のスキャンダルのニュースに興じるのはアングロサクソンであって、自分たちは私生活には立ち入らないというスタンスだった。アングロサクソンとは英米を指し、彼らとの違いを強調するのがフランス人のプライドだった。

 しかし、今回は自らその慣習を破ったわけで、フランス国民もどう受け止めるべきか議論は沸騰している。

(M)