ローマ法王、5月に中東の聖地巡礼
再統合への一歩記せるか
イエスの足跡たどる
 ローマ法王フランシスコは5日、5月24日から3日間の日程でヨルダン、イスラエル、パレスチナの聖地を訪問すると発表した。法王の中東聖地巡礼の主要目的は、パウロ6世と正教会最高指導者、コンスタンティノープル総主教アテナゴラスとの歴史的会談を記念することだ。パウロ6世とアテナゴラス総主教は1964年1月5日に会談し、1054年以来続いてきた東西教会の相互の破門(大シスマ)宣告を取り消した歴史的な和解を実現した。
(ウィーン・小川 敏)
東西教会の歴史的和解記念
ユダヤ教との友好にも期待
フランシスコ法王はアンマン、ベツレヘム、エルサレムの3都市を訪問し、アンマンでアブドラ・ヨルダン国王と、ベツレヘムではパレスチナ自治政府のアッバス議長、そしてエルサレムではペレス・イスラエル大統領、ネタニヤフ同国首相と、それぞれ会談する予定だ。バチカンからの情報によると、フランシスコ法王はシリアのダマスカスの訪問を希望していたが、安全上の理由から今回は実現しなかった。
中東巡礼のメーン行事、東方正教会の精神的指導者(エキュメニカル総主教)バルトロメオス1世と50年前の歴史的和解を記念する行事は聖墳墓教会で行う。同イベントはエルサレム共同巡礼を提案したバルトロメオス1世の要望に応えるものだ。バルトロメオス1世は昨年3月末、イスタンブールでの記者会見で「正教会とローマ・カトリック教会の東西キリスト教の再統合にチャンスが出てきた」と語り、注目を浴びた。
フランシスコ法王はバルトロメオス1世を「私の兄弟、アンドレアス」と呼び掛けている。聖アンドレアスは聖ペテロの兄弟で、それぞれ聖アンドレアスはコンスタンティノープルの、聖ペテロはローマの守護聖人だ。
キリスト教の再統合問題の最大の障害は、バチカン側が「カトリック教会はイエスの弟子ペテロの継承者であり、真理を独占している」と主張してきたことだ。フランシスコ法王がこの「真理の独占」を放棄し、他のキリスト教側に歩み寄ることができるかが、東西キリスト教の再統合の鍵を握っている。
ところで、ローマ法王にとって聖地巡礼はイエスの歩みをたどる歴史的意味合いが深い。パウロ6世以来、ローマ法王は在位中に中東の聖地を一度は巡礼している。イエスの足跡、アブラハムから派生したユダヤ教、キリスト教、イスラム教の一神教のルーツをたどる旅だからだ。
もちろん、紛争地の中東の聖地巡礼にはさまざまな障害もある。前法王べネディクト16世は聖地巡礼前の2009年1月、教会から破門したカトリック教会根本主義者故ルフェーブル大司教の聖職者グループ「兄弟ピウス10世会」の4人の司教に対する破門宣言を撤回する教令を出したが、4人の司教の中にホロコーストを否定する聖職者が含まれていることが発覚し、イスラエルを怒らせた。また、同16世がトリエント・ミサ(伝統的ラテン語ミサ)を認めた結果、聖金曜日(キリストの受難日)の祈りの中で、ユダヤ人の改宗を促す祈りが復活したことでエルサレムから反発を受けた。
それだけではない。ナチス政権のユダヤ人虐殺に対し沈黙してきたと批判されるピウス12世(在位1939年3月~58年10月)の列福問題はバチカンとイスラエル両国関係にとって依然、未解決の問題だ。南米初のローマ法王フランシスコの中東聖地巡礼が成功裏に行われるかどうかは不確かだ。
法王庁の前キリスト教一致推進評議会議長バルター・カスパー枢機卿はバチカン放送とのインタビューの中で「フランシスコ法王の中東聖地巡礼にはアルゼンチン時代の知己のラビが付き添う。フランシスコ法王はブエノスアイレスの枢機卿時代からユダヤ教とは密接な関係を保ってきた。それだけに、今回の中東巡礼を通じてカトリック教会とユダヤ教の関係が深まることが期待される」と述べている。
フランシスコ法王の5月の聖地巡礼は、昨年7月のブラジルの首都リオデジャネイロで開催された第28回青年カトリック信者年次集会(ワールドユースデー)に次いで2回目の海外訪問となる。











