青瓦台が仕掛ける反日、日本理解者を「土着倭寇」
最近、韓国でわずかでも日本に理解を示す者を「土着倭寇」と呼ぶようになった。倭寇とは13世紀から16世紀にかけて朝鮮半島や中国大陸の沿岸地域で私貿易を行っていた武装した日本人商人で、中には日本人を装って海賊行為を働く半島人、大陸人もいたという。「半島に土着した倭寇の子孫」つまり日本人の血を引く、だから日本の肩を持つ、そういう者を「土着倭寇」と名付けたわけだ。
しかも、これを言いだしたのは青瓦台(大統領府)スタッフ。保守系の朝鮮日報の論説を批判してのことだった。「青瓦台の半数以上は主体思想派(主思派)」といわれる北朝鮮の思想的影響を受けた学生運動出身者が占めている。世宗研究所日本研究センター長の陳昌洙氏によれば、彼らは「対北関係を推進することを第一とし、そのため、対日対米関係が損なわれても構わない」と考えている。
「土着倭寇」のレッテルを貼られれば「何も言えなくなる」雰囲気が韓国のメディアには満ちている。そのため、日本に理解を示す論調は出せないという圧力が働いているのだ。もはや、こと対日問題については言論の自由はないに等しい。
同じことは外交の場でもいえる。「日本通」の立場が悪く、「ジャパンスクールが左遷されている」というのだ。現在、東京の韓国大使館には日本政府や学会、メディアに深い情報ルートを持つ外交官がほぼいない。このことが、今回、日本の出方、安倍政権の覚悟を見極められなかった原因の一つとなっている。
「東京の大使館が情報を取れないと嘆いている」と陳氏は明かす。「東京の情報がワシントンから来る」という話まである。つまり米国務省で東京の情報を聞き出し、それをソウルに伝えているというのだ。
これほどまでに東京の大使館の情報収集能力が弱まったのは、当然ながら日本通を排除したことが原因だ。情報担当の公使が福岡総領事に左遷された後退任したり、局長経験者が大使にもなれず、日本の私大で研修生活を送っている。こうした露骨な日本通への仕打ちで、文在寅政権は自ら日本へのアンテナを壊してしまった。
そうした状況だから、輸出規制問題で大統領府の鄭義溶安保室長が日本に研究留学中の専門家に、「誰と話せばいいのか」とアドバイスを求めてきたり、「谷内正太郎(元外務事務次官)も会ってくれない。萩生田光一(自民党幹事長代行)とはどういう人物か」と言ってくる始末だという。
こんな青瓦台や外交部の体たらくは韓国民にはほとんど知らされていないという。「韓国大使館が日本の要人や情報通に会えない、ということは報道できない」(陳氏)のだそうだ。外交部と政権が、自らの偏向人事で日本通を排除してきたことが明らかになれば、とんでもない批判に晒(さら)されることになる。
韓国側は李洛淵国務総理の日本派遣を考えているようだ。東亜日報東京特派員としての経験が買われてのことだが、李氏が東京にいたのは30年以上も前の話で、どれほどの交渉ができるかは分からない。むしろ総理まで送って、見るべき成果が得られなければ、将来大統領を狙う李氏の経歴に傷を付けることになるし、生半可な“妥協”をすれば、総理の椅子すら危うい。
日本に理解を示せば「土着倭寇」とレッテル貼りして発言を封じ、外交の場からは日本通をパージする。そのツケがいま回ってきている。しかも、この状況が改善される見込みはない。「もっと(日韓関係は)悪くなる」と陳氏は見通す。まだ底が見えていない。
(編集委員・岩崎 哲)