フッ化水素はどこへ行った、話が通じなくなっている日韓

何処へゆく韓国 「親北反日」の迷路(4)

 日本の戦略物資の対韓輸出規制見直しに韓国は強く反発している。日本が「安全保障上の理由」だと説明しても、韓国は頭から大法院(最高裁)の戦時朝鮮人労働者(いわゆる「徴用工」)判決に対する「経済報復」だと捉え、自由貿易の原則に反するとして、世界貿易機関(WTO)に提訴すると息巻いている。

岩松潤貿易管理課長

韓国に対する輸出規制強化問題で記者会見する経済産業省の岩松潤貿易管理課長(右)=19日、同省

 「日本と韓国は話が通じなくなっている」。韓国世宗研究所日本研究センター長の陳昌洙氏は語る。日本は事実を重視し、論理的に話を進めようとするが、韓国は感情の方が勝り、明らかな間違いでも、それを認めず、持論を押し通そうとする。その背景には、よく言われる「べき論」がある。事実よりも前に「こうあるべきだ」という原則や理念が優先するのだ。

 従って、今回の輸出規制にしても、日本側が根拠にしている「協議が行われてこなかった」という事実すら認めないのだ。

 日本の化学専門家は、韓国は文在寅政権になってから「今回の管理対象であるフッ化水素の対韓輸出がケタ違いに急増し、それに使う半導体産業が増えていない実情がある」と指摘する。フッ化水素の輸出量に対して半導体生産量が合わないのだ。合わない分はどこへ行ったのか。「フッ化水素はウラン濃縮の戦略物資なので、もし日本が韓国のこの姿勢を放置すれば、日本がテロ国家による核兵器開発に協力したことになる」と同専門家は危惧する。ホワイト国指定を解除する日本側の主たる理由である。

 韓国がこれを回避しようとすれば、これからでも協議に応じ、フッ化水素の使い道を数字で明らかにし、管理が適正に行われていることを示せばいいだけの話だ。日本側の当然の疑問に応え、「著しく損なわれた」(菅義偉官房長官)信頼関係を回復できれば、これまで通りホワイト国リストにとどまることができる。なのに、韓国政府はただ日本を非難し、米国やWTOに泣き付き、国内では反日不買運動を展開する。韓国に説明できない何かがあるとの疑念を自ら呼び込むようなものだ。

 経済産業省は7月12日、韓国の担当官を呼んで、規制を通常に戻すことの「説明」を行った。物置のようなスペースで、部屋の隅には椅子が積まれており、簡単な事務机で「水一杯も出さずに」(韓国側)説明が行われた。韓国では「戦争している国同士でもこれほどの冷遇はない」(韓国紙)として、「倉庫会議」と呼び、憤りを隠さない。「おもてなしの日本はどこへ行った」(同)というわけである。

 こうなるともはや論理的なやりとりは不可能になってくる。昨年12月、日本海の排他的経済水域(EEZ)で自衛隊機が韓国艦船からレーダー照射された事件でもそうだった。日本側が証拠を示してもなお、韓国側は認めず、むしろ自衛隊機の「危険なほどの低空威嚇飛行」を非難するといった強弁を崩さなかった。自衛隊機は国際法や国内関連法令で規定されている高度および距離を十分に保って飛行していたのにである。

 日本海上でのやりとりは日韓はもとより、中国やロシア、そして米軍でも傍受していることで、「事実は明々白々です」と伊藤俊幸元海将も強調し、「証拠を出せば終わりです」と言っていたのだが、韓国は一切認めず、うやむやに終わっている。韓国とは事実の争いすらできないという印象を日本国民に与えた事件だった。

 韓国が単に「感情的な反発」をしているだけなのだろうか。自分に不利になることは全く認めず、論理のすり替えや責任転嫁するのを見ていると、背後に隠された意図、すなわち「対日関係破壊」のもくろみがあるのではないか、とまで思えてくる。しばらく日韓には会話が成立しない状況が続く。

(編集委員・岩崎 哲)