バチカンのアンチ性犯罪会議、具体策なく閉幕
法王演説に「失敗」の声も
バチカン(ローマ法王庁)で聖職者による未成年者への性的虐待への対策をテーマに開催されていた「世界司教会議議長会議」(通称「アンチ性犯罪会議」)は24日、フランシスコ法王が「聖職者の性犯罪予防」と「加害者の処罰」に関する司教への指針の見直しなどを約束して幕を閉じた。法王の掛け声で開催された同会議には、世界から114人の司教会議議長のほか、修道院や教会関係者約70人が参加した。会議を総括した最終文書は作成されなかった。
カトリック欧米教会などで発覚した聖職者の未成年者への性的虐待など性犯罪件数は、数万件といわれているが、その多くは既に時効となっている。
法王は会議の開催前、司教会議議長に聖職者の性犯罪の犠牲者と会い、その苦境を聞いてくるようにと課題を与え、会議初日の21日には協議のために21項目の枠組みを明らかにし、「世界は聖職者の性犯罪を糾弾するだけではなく、その犯罪に対する具体的な対応を求めている」と警告を発してきた。
最終日の24日の演説で法王は、「われわれは教会を守ることを最優先するメンタリティーから脱皮し、犠牲者をまず考えなければならない。教会は聖職者の性犯罪に対し厳しく対応し、聖職者の性犯罪を隠蔽(いんぺい)することに終止符を打つ」と約束した。だが、具体的な対応について、何も語らなかった。
「アンチ性犯罪会議」の動向を追うためにバチカン入りした犠牲者団体は連日、サンピエトロ広場でデモを行った。具体的な決定もなく会議が終わったことに失望し、「法王の演説は空言だ」といった怒りの声すら聞かれた。
法王の閉幕の演説に対し、ドイツのミュンスター大学教会法研究所のトーマス・シュラー所長は「失敗だ」と断言している。「フランシスコ法王は教会歴史で改革者としてではなく、既成権力の保護者として名を残すことになった」と総括している。
ドイツの犠牲者保護団体のマティアス・カチュ氏は、「法王は性犯罪対策では先頭に立って戦うと表明しながら、責任や過ちがどこにあるのかを明示せず、具体的な対応策を提示せず終わった。法王の演説は恥ずかしい」と酷評した。
また、イタリアの聖職者による性犯罪の犠牲者ネットワークは、「司教議長たちは何も決めなかった。彼らへの信頼はもはやゼロだ」と述べている。
バチカン放送によると、バチカンは近い将来、「未成年者の保護のための法」の施行、聖職者の性犯罪対策で苦慮する司教区へ「支援グループの派遣」「未成年者の保護に関するパンフレット配布」などを実施するという。
聖職者から性的虐待を受けた元修道女と会談したオーストリアのカトリック教会司教会議議長、シェーンボルン枢機卿は会議開催前、「会議にはあまり期待していない。聖職者の性犯罪が教会内で行われたという事実に対し、司教たちが共通認識を持つことができれば成功だ」と述べていた。なぜならば、聖職者の性犯罪について、アフリカ教会やアジア教会では、「それは欧米教会の問題にすぎない」といった声が支配的だったからだ。