亥年とリュウキュウイノシシ


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 今年の干支は「亥年」。沖縄にもリュウキュウイノシシと呼ばれる小型のイノシシが生息している。

 北は奄美大島や加計呂麻島、徳之島などの奄美諸島から、南は沖縄本島、石垣島、西表島などの沖縄諸島にかけて分布している固有亜種で、沖縄地方では「ヤマンシー」とも呼ばれている。体の色や形態は本州などに生息するニホンイノシシと同じだが、島嶼(とうしょ)部に分布しているためなのか、全体的に体は小さい。

 沖縄県立博物館・美術館の説明によると、1万8000年前、港川人が発見された八重瀬町港川フィッシャー遺跡では人骨とともにイノシシ化石が数多く発見され、かなり早い時期から沖縄にもイノシシが分布していたことが分かっている。また、南城市武芸洞遺跡でも約6000年前の地層から土器や石器とともに大量のイノシシ骨が発見された。

 昔から沖縄の人たちにとって、イノシシは貴重なタンパク源として食されてきたというのだ。八重山地方では毎年11月15日から3カ月間、イノシシ猟が解禁となる。かつては、木の枝や葉を使って仕掛けた罠(わな)で捕まえるという原始的な猟が主流だったが、現在では犬を使って追い込み、銃で仕留める追い込み猟がよく用いられている。八重山地方や沖縄本島北部のやんばる地方では、イノシシによってパインなど作物が荒らされる被害が頻繁に報告されている。

 沖縄では現在、イノシシを食べることは少なくなり、「山原猪豚」という食用ブランド家畜が国頭村で飼育されている。1981年に国頭村で捕まえたイノシシを豚舎で飼い、ブタと交配させたことがきっかけで誕生したものだ。国頭村を中心にこのイノブタ料理を提供する食堂が何件もある。豚肉よりも味は濃厚で、イノシシ特有の臭みがない。

(T)