弾道弾の開発進める北朝鮮

Charles Krauthammer米コラムニスト チャールズ・クラウトハマー

「核放棄」説得 全て失敗
日本の核武装容認も選択肢

 金正恩氏は1日、「大陸間弾道ロケット(ミサイル、ICBM)試験発射準備が最終段階に達した」と発表したが、そのようなことをしても、問題への対応を先送りするだけであり、いずれ行き詰まってしまう。

 1990年代初め以降、北朝鮮に核開発計画を放棄させるため、あらゆる説得がなされてきた。すべて無残に失敗した。北朝鮮はその代わりに、資金、食料、石油、商用原子炉をもぎ取った。しかし、すべてペテンだった。北朝鮮は決して核を手放さない。核を、体制を維持させるための切り札と考えているからだ。

 北朝鮮は、核があれば侵攻されることはないと考えている。サダム・フセインは、核を獲得する前に、侵攻され、地位を追われた。金氏は自身に同じことが起きることを許しはしない。それが、近年で最高位の脱北者、太永浩氏が「金正恩が権力を握っている限り、北朝鮮は核を手放すことはない。見返りに1兆㌦、10兆㌦を積まれても変わりはない」と指摘したのはそのためだ。

 一方、北の開発は進んでいる。すでに、何度も核爆弾を爆発させた。人工衛星の打ち上げには2度、成功している。ICBMの根幹技術が整っているということだ。小型化してロケットの先端に取り付けられ、再突入を制御できれば、平壌でボタンを押して、米国の都市一つを丸ごと消し去ることができる。

 どう対処すべきなのか。選択肢は限られている。

 1、ミサイル発射施設への先制攻撃。実行可能だが、無謀だ。実際の戦争を引き起こす可能性が最も高い。北朝鮮は、通常兵器で優位に立ち、近いという点で有利だ。つまり、ソウルからわずか50㌔の非武装地帯(DMZ)には、大規模な陸軍が待機している。米国は、アジアでもう一度地上戦を行う気はない。

 2、試験発射のICBMを打ち落とす。これはウォール・ストリート・ジャーナル紙が提唱した。できると仮定しよう。民主党は、レーガン大統領が1980年代にミサイル防衛を提唱して以降、中止させたり、遅らせたりするためにできる限りのことをしてきた。それでも、米国なら、北朝鮮が開発できるような旧式のICBM1発を迎撃することはできるはずだ。

 北朝鮮領付近で迎撃されることはないものの、それでも軍事的な反応を引き起こす可能性は非常に高い。そのため、新政権は、ミサイル試射を行えば撃ち落とすと明確な警告を出すべきだ。オバマ大統領は去る。このようなレッドラインを設定することは強力な抑止力となる。

 3、韓国に戦術核を再度配備する。韓国の戦術核は、冷戦が終わりに近づいたことから、ブッシュ元大統領が1991年に撤収させた。ゴルバチョフ氏のソ連は相応の対応を取った。基本的にはいい考えだが、朝鮮半島ではそうはならなかった。北朝鮮は、戦術核の存在を常に非難していたが、この核は北朝鮮からの計画的な侵攻に対して抑止力となっていた。再配備すれば、効果的な交渉材料となる可能性がある。

 4、中国への経済的な圧力。北朝鮮が存続しているのは中国のおかげだ。ドナルド・トランプ氏は、貿易を使って中国に圧力をかけて、北朝鮮に思いとどまらせることを考えているようだ。問題は、中国が、この上なく戦略的価値のある資産である北朝鮮を、経済的圧力だけで進んで差し出すという兆候を見せないことだ。北朝鮮は中国に完全に依存している従属国であり、環太平洋地域では米軍にとって障害であり、目障りな存在だ。

 5、中国への戦略的な圧力。米国は、北朝鮮の核開発を停止させるよう何十年にもわたって中国に求めてきた。中国は制裁に同意し、時に困惑の表情を見せてきた。それだけだ。確実に注意を引き付けられる方法がある。日本が核抑止力を持つことに今後、反対しないと宣言することだ。

 これは、米国で一般的な反核拡散政策に反する過激な手段だ。しかし、重要なのは、北朝鮮の計り知れないほど危険な政権に核が渡るのを防止することだ。それには中国が鍵となる。中国にとって悪夢は数多くあるが、日本の核武装以上のものはない。

 米国が直面している基本的な戦略的課題は、ロシア、中国、イランのような修正主義国の台頭だ。各国の周辺地域から米国の影響力を排除しようと奮闘している。それに比較すれば、北朝鮮の問題は小さい。風変わりな冷戦の遺物だ。北朝鮮は、キューバのような戦略的なおまけ部分のように考えるべきだ。もし核がなければ、確かにそうなる。

 もしもの話だ。まったく予測不可能で、気まぐれで、合理性を欠くこともよくある政権が、ミサイルで米国の都市を破壊する能力を獲得しようとしている。これは大変な問題だ。

 冷戦が終結して長い時間がたつが、北朝鮮は爆発しないままの爆弾なのかもしれない。今後も爆発しない保証はまったくない。

(1月6日)