才能に障害はない―ある日のアート村にて
一人ひとりの才能を活かした雇用促進を目指して
東京駅から歩いてわずか3分。千代田区大手町2丁目、かつて呉服橋と呼ばれた一角に、パソナグループの本社ビルがあり、そこに「パソナ・ハートフル社」の工房を兼ねたオフィスがある。
部屋いっぱいにコの字型に配置されたデスク。若い男女の社員が、赤や青、白や黄色など色とりどりのエプロンを付け、絵筆やペン、鉛筆などをもって作業をしている。
ただそこには人の出入りの多い人材派遣業らしき慌ただしさはなく、ただ、あちこちに紙やノート、文房具類等が散らばっている姿が、部屋内の忙しさを感じさせている。
そう、部屋は「パソナ・ハートフル社」の社員たち約20人ほどが、毎日絵を描いたり、刺繍を編んだり、講師の講義に耳を傾けたり、あるいはミーティングを開いたりし、1日を過していく作業場であり、勉強の場であり、安らぎの場でもある。
いくらお金を積んでも買えないもの!
そのパソナグループに、25年も前から出入りをし、雇用障害者の実務教育に手を貸してきたのがアートや美術関係の専門家である画家の相澤登喜恵さんだ。
その相澤氏はこう言っている。
「今から25年ほど前になりますが、パソナ社から講演を依頼されたことが、お付き合いの始めだったと思います。しばらくして同社は社内にアート村を設立することになり、身障者の才能発掘、雇用創出などのお手伝いをすることになった。それが今日、大きく発展をしてきまして……」
以来今日まで、パソナハートフル社と二人三脚で障害者の自立や職域拡大に汗を流してきた。
今年7月、羽田空港でパソナハートフル社の絵画展が開かれた時、彼女は南部靖之会長から、こんな言葉をかけられたという。
「相澤先生! 先生はいくらお金を積んでも買えないものを作ってくれた!、先生、ありがとう!」と。
南部は自らも絵筆をとって絵を画く即席アマチュア画伯。それがパソナグループの“障害者画伯”育成文化につながっていることは確かで、この人材派遣会社乱立時代に、他社との差別化、違いを見せる大きな武器である。