ディーゼル車の将来


地球だより

 ドイツの大手自動車メーカー、フォルクスワーゲン社が、同社のディーゼル車の排ガス規制の検査に不正なソフトを使っていた問題は、世界中に大きな衝撃を与えた。とにかくドイツといえば、高い技術力と何事にも生真面目に取り組む印象があり、「あのドイツの会社がなぜ?」と思われた。

 その波紋は今でも影響を与えている。日本の自動車メーカー、日産と提携関係にあるフランスの自動車メーカー、ルノーの株価が先週末、大幅に下落した。理由はルノーが生産・販売する自動車が排ガス規制の基準値をクリアできていないことが判明したからだ。

 ルノー社はフォルクスワーゲンのような不正ソフトは使っていないことを断言し、仏環境省も調査を開始した結果、不正ソフトを使用していないことが判明したが、信頼性は揺らいだままだ。フランス第2位の自動車メーカー、ルノーは、売り上げの50%以上をディーゼル車が占めており、今後の苦戦が予想される。

 ヨーロッパでは、高級車から普及車まで、ディーゼルエンジンの需要は高い。理由は、高速で長距離移動する車が多いからで、無料の高速道路も多く、道路の整備も進んでいる。自動車学校でも省エネ教育が実施され、例えば、高速道路で窓を開けて走行すると燃費が落ちるとか、自動車の色も夏の暑さにはシルバーがいいなどと教えられている。

 ディーゼル車は燃料費が安いだけでなく、エンジンや部品の耐久性が高いというのが利用者の多い理由になっている。それに中古市場が日本より活発なフランスでは、ディーゼル車の方が高値で売りやすいという事情もある。

 しかし、大気汚染問題への関心が高まる中、ハイブリッド型のエンジン開発で遅れをとった欧州各社は、ガソリン車から電気自動車へのつなぎでディーゼルエンジン車を考えている場合が少なくない。頑丈な物を大切にして長く使うという欧州人のメンタリティーにディーゼル車は合っていたとも言える。

 そんなディーゼル車ユーザーも、フォルクスワーゲン車の偽装問題をきっかけに、ディーゼル車離れが起きている。友人のブリュノー氏は6年間で30万キロ以上乗ったディーゼル車を手放し、最近、燃費の比較的いいガソリン車に買い換えたばかりだ。

(M)