民主化強制は失敗、アラブ世界に必要な「発展」
ロシアのシリア内戦介入アルアハラム財団事務局長 モハメド・F・ファラハト氏に聞く(4)
――ムスリム同胞団のエジプトにおける現状はどうか。政府からの強い圧力の下に彼らは「イスラム国(IS)」や過激派により近づいているのか。
同胞団は、国家からの圧迫のみならず、社会からの圧迫も受けている。同胞団は彼らが穏健な民主的グループという彼らの主張を守ることに失敗した。同胞団が権力を握っていた時代に、彼らの話し方が変化し、社会に暴力を持ち込んだためだ。同胞団幹部のある者はシナイ半島のアルカイダ組織や他の過激派グループと強い関係に言及した。同胞団は、モルシ(前大統領)時代に、聖戦組織との強い関係を再構築、リビアからシナイ半島への武器の密輸を許可した。
同胞団の数は彼らが言うように多くはない。エジプトにおいては100万人以下で、約75万人ぐらいだろう。これはとても少ない数だが、彼らは、よく組織化され、また同胞団のメンバーはいつも指導者の命令に対して議論しないで従うので、大きくて強く効果的なグループのように見えるのだ。しかし実際はそうではない。この組織が将来、完全に無くなるかどうかを言うことは難しいが、非常に弱くなり得る。
――欧米世界はアラブ世界を民主主義にしようと試みたが全て失敗した。どうしたらアラブ世界を民主主義国家に変えることができるのか。
ここに多くの教訓がある。最初の教訓は、アラブ世界における民主化は外部の力ではなされないということだ。欧米は彼らの側から、エジプトや他の国(イラクやアフガンなど)に押し付けたが失敗した。彼らは軍隊を使って民主主義を受け入れさせようとしたが失敗した。
第二の教訓は、もしわれわれが中東に民主主義を創建したいと思うなら、われわれ自身のプロジェクトを通して、なされなければならないだろう。これは私自身の意見だが、アラブ世界がいま必要としていることは民主主義創建ではなく、まず発展だ。
これは、韓国など、アジア諸国からの教訓だ。彼らはまず発展させ、民主主義はその後やって来た。
例えばエジプトでは、(ムバラク政権を終わらせた2011年)1月25日革命は、民主主義も発展ももたらさなかった。エジプトはまだ貧しい国だ。また、われわれは民主主義国家ではない。1月25日革命後われわれは2つの目的を持たねばならなかった。しかしわれわれは主に民主主義に注意を払い、発展を無視した。政治的な部分や、自由を求める行動などに集中、民主主義以外の他の要素を無視した。
――エジプトは民主主義に向かっていると思うか。
そう思う。議会選を通じ、サラフィスト・グループのヌール党が伸びると心配したが、多分数議席しか獲得できないだろう。そのことは、社会がより実務的政治的になっていることを意味し、宗教的でないことを示している。
(聞き手=カイロ・鈴木眞吉)
=終わり=