THAAD配備、韓国の選択肢

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 THAAD(サード=終末高高度防衛)ミサイルは弾道ミサイル防衛(BMD)のカギである。高度40㌔以下で弾道ミサイルを迎撃するパトリオットミサイル(PAC)はいわば“低高度防衛ミサイル”であり、サードミサイルはより高高度(40㌔~150㌔)で終末段階の弾道サイルを迎撃できる最新MDシステムだ。

 1991年の湾岸戦争で、パトリオットミサイルがイラクのスカッドミサイルを完璧に迎撃できなかった教訓からサードミサイルが生まれた。サードミサイルが高高度で敵の弾道ミサイル迎撃に失敗しても、低高度でPACが迎撃する効果的な二重のミサイル防衛網が整う。

 サードミサイル配備をめぐって韓国では韓中経済協力と費用対効果を考慮して賛否両論がある。中国の配備反対は、韓国のアジアインフラ投資銀行(AIIB)参加を促す狙いがあった。安保政策は一国の国家存亡を左右する最優先事項であり、周辺国の顔色を伺う余地はない。米軍がサードミサイルを配備するのと同時に、韓国軍がPAC3を導入するのが望ましい。

 北朝鮮は弾道ミサイルのスカッド600基、ノドン200基、そして移動式発射台100台を保有している。サードミサイルは弾道ミサイル発射の兆しを早期察知し、先制制圧して被害を最小化することが目的だ。中国はサードミサイル配備に反対するのでなく、北朝鮮が核を断念するよう働き掛けるのが先であろう。

 韓国の『2014国防白書』は「北朝鮮の核兵器小型化能力は相当水準に至ったようだ」「長距離弾道ミサイルはアメリカ本土に脅威を与えうる」と指摘する。「日米同盟」と「米韓同盟」は東アジア地域の平和と安保を支える二本柱であり、これに亀裂が生じると危険な事態を招来する恐れがある。

 3月20日、駐英北朝鮮大使は「われわれは核弾道ミサイル発射能力を持っており、戦争を恐れない」と発言。ジョンズホプキンス大学米韓研究所のジョエル・ウィット上級研究員と科学国際安全保障研究所(ISIS)のデービッド・オルブライト所長は「北朝鮮は10個以上の核を保有しており2020年までに100個の核を保有可能」と予測する。韓日米3国の「情報共有」と「ミサイル防衛システム」を早急に整える危機管理を優先すべき時である。

(拓殖大学客員研究員・元韓国国防省北韓分析官)