「家族という病」の病 他人にできない家族愛

驚いた広告の宣伝文句

 残念ながら、いつの世も、世の中を狂わせるのは、この日本の国にあっては“教育”と“マスコミ”かも知れない。昔は軍国主義、今は無神論。真に正しい愛国心と、家族愛を育てる教育が否定されて来た。

 我が家は息子が取っている日経新聞を読ませて貰っているが、今年の春のある日、下段広告欄一杯に載った書籍広告を見て驚いた。

 本のタイトルは「家族という病」(幻冬舎)で、著者は早大出身の元NHK女性アナ。今は作家業のようだ。

 この本を購読はしていないが、広告欄一杯に書かれた内容を読むと、見出しの大文字は、「殺人事件で最も多いのは“家族間”である」から始まり、「家族ほどしんどいものはない」「日本人の多くが『一家団欒(だんらん)』という呪縛にとらわれているが、『家族』は、それほどすばらしいものなのか?」「実際には、家族がらみの事件やトラブルは挙げればキリがない」「実は一番理解していなかったことを、家族が他界してから気づく人も多い」。

 そして、「なぜ私は家族を避けてきたのか」「家族の期待は最悪のプレッシャー」などと続く。

 興味のある方は、買って読んでみるが良いだろう。すでに掲載された時の広告には“30万部突破”とあったから、家族で悩む人は多いのかも知れない。

 しかし、本当にそうだろうか、と私は疑う。

 確かに著者の言うとおり、殺人事件で最も多いのは「家族間」かも知れない。

 それは私も大きな問題として捉えている。

 だが、私の視点は少し違う。

 彼女はとても頭の良い人かも知れない。だから、人の言葉の裏を読むのだろう。

 私は言われた通りを行い、感じた通りを信じて、今まで生きて来た。それで、父母や祖父母、また弟妹たちに裏切られたと思ったことは一度もない。

 だから、父母、祖父母の言う通り、また願う通りに動き、努力してきた。それで間違ったとは一度も思ったことはない。

 私は80歳を越している。小学生時代の先生の言われる通り、親を大事に、兄弟仲良く生きなさい、と教えられた通りに生きて来たつもりだ。

 それで7人のきょうだいは、いまでも仲良く付き合い、時には食事を共にしたりしている。

 弟は4歳下だが、ハシカの熱で、残念ながら視力を失った。脳の視神経がやられたらしい。2歳頃と思うが頭の良い弟で、手先も器用、母は嘆いたが、弟はいたって元気で、一人でほころびを縫い、針に糸を通して、ボタン付けなどしていた。それが徐々に視力を無くした。

 いつもニコニコ笑顔で、盲学校に入れることを母は憂えたが、本人は小、中、高と盲学校に通い、仲間と音楽をやり、歌を唱(うた)い、学校の帰りを迎えに行く我々姉妹はその歌を聴き、笑い声の輪に入って大きくなった。

盲目の兄弟に付き添う

 今でも弟のすぐ下の妹は、兄の世話をしようと兄の治療院(母が建ててくれた)の傍らに自分の家を建て、夫にも協力させながら、兄の食事の世話や、施設に入った現在も、毎日車で施設に通い、ランチタイムの世話をし、姉の私に報告してくれる。

 その度に私は、一枚の葉書を書き、「お父さん、お母さんが天国から喜んで見ています。頑張ってくださいね」と、便りをする。

 他人の誰が、車で毎日施設に通い、盲目の兄の昼食の付き添いに行ったりするだろうか。

 盲目の子を思う父母の悩み、悲しみを感じているから、姉の私も妹を励まし便りを書き彼の生きる力になろうと努力するのだ。

 家族だけが知る家族愛ではなかろうか。

 今は亡き父母に感謝して行う兄弟愛なのだ。