豪雨災害、森林整備など総合的対策を


 関東や東北地方を襲った記録的な豪雨で、各地に深刻な被害が出ている。鬼怒川の堤防が決壊した茨城県常総市では22人が行方不明となった。

 宮城県大崎市では渋井川の堤防が決壊し約1000人が住む地区が冠水、多数の住民が取り残されている。救助・捜索活動が急がれる。

鬼怒川の堤防が決壊

 鬼怒川は利根川の支流で、堤防決壊は鬼怒川としては栃木県内で起こった昭和24年以来。記録的な大雨によって一挙に増水し左岸の堤防が決壊した。住宅地約32平方㌔が浸水し、決壊の範囲は約140㍍に及んだ。また渋井川は鳴瀬川の支流で川幅は広くなく、傍に住宅地が広がっている。

 鬼怒川の決壊した堤防付近は「10年に1度程度の大きい水害には対応できない」として国土交通省が改修を計画していたという。しかし今回のような豪雨に対しては、その効果は明らかではないだろう。

 鬼怒川の堤防決壊で約6500棟が浸水したほか、家屋が流され22人が行方不明になっている。また決壊した渋井川の周辺地区の住民からも救助要請が相次いだ。

 鬼怒川の堤防決壊地区の住民に避難指示が出されたのは、決壊する約2時間半前だった。素早く避難ができていれば、助かったケースもあっただろう。高齢者や小さい子供がいる家庭は、洪水被害の予想範囲を示す災害予測図(ハザードマップ)の確認が常に必要だ。

 一方、自治体は自衛隊などに災害派遣を要請。警察や自衛隊、海上保安庁はヘリコプターやボートで救助活動を続けている。避難所や家の中に相当数の人々が取り残されており救援が急がれるが、二次災害を起こさないよう、安全を担保した救助活動を求めたい。

 今回、記録的な豪雨となり被害をもたらした原因は、雨雲が南北にまっすぐ延び続け、強い雨が連続する「線状降水帯」の存在だ。台風18号から変わった低気圧がもたらした南からの湿った空気と17号周囲の風が関東地方上空で衝突。その南北の線上に積乱雲が長く延び大雨が降り続いた。低気圧の動きは非常に遅く、気象庁は降水量の多さについても「異常な事態」と発表した。

 全国のどの地域でも集中豪雨の可能性が出てきた今日、鬼怒川や渋井川の氾濫は国民に大きな衝撃を与えている。

 わが国の河川は底が浅く、川幅も狭く蛇行しており、それが氾濫の一因となってきた。河川の水害防止には従来、堤防建設を中心に、川幅を広げ、底を掘り下げ直線形に整えるなどの工事が続けられてきた。事故のあった河川域を含め、わが国の河川・堤防事業は今、ほぼ全国的に行き渡り、改善の余地は、それほど大きくないと言われる。

手入れで保水機能向上を

 そのため堤防の補強工事などと並行して森林の整備が求められる。森林は保水機能があり、河川の水量の調節弁となっているダムを補強できる。だが日本では林業の衰退で間伐などの手入れが十分に行われず、森林の機能が低下している。改善への取り組みを進めたい。

(9月12日付社説)