米中間選挙、オバマ氏の指導力欠如示した


 オバマ米大統領の残り2年間の任期を左右する中間選挙の投開票が行われ、野党・共和党が8年ぶりに上院の過半数を制し、下院でも多数派を維持した。

 不満を募らせる国民

 中間選挙は大統領選の中間の年にある国・地方の統一選挙。連邦議会では今回、上院(定数100)の36議席と下院(同435)の全議席が改選され、36州の州知事選なども行われた。

 少なくとも今後2年間、共和党が上下両院で主導権を握ることになる。ケンタッキー州で当選を決めた共和党のマコネル上院院内総務は「人々にもう信用されなくなった政府が問われた選挙だった」と総括した。オバマ大統領の政権運営は一層厳しさを増し、レームダック(死に体)化の加速は必至だ。

 選挙の争点は、2014年から本格的に開始された医療保険制度(オバマケア)、不法移民の解消を狙った移民法改革など国内政策が中心だったが、とりわけ有権者の関心は、どのような選挙でも常に大きな影響を及ぼす経済に向けられた。

 米国経済は少なくとも数字の上では好調で、米連邦準備制度理事会(FRB)による量的緩和策も10月で終了。6年かけてようやく回復軌道に乗りつつある。過去4年半で1000万の雇用が生まれており、これは史上最長の拡大期間である。GDP(国内総生産)成長率は不況前のピークを更新。成長スピードが予想以上に上がっている実態が見て取れる。

 これだけの数字を見ると、与党・民主党に逆風が吹きにくいと考えられたが、選挙では景気上昇を認めず経済の問題点を指摘する共和党に敗北した。

 この6年間、家計の景況感は冴えない状況が続いており、国民には豊かになったという実感がなかったと言える。これまで堅固な支持基盤であった黒人層を中心とするマイノリティーや労働者、オバマ演説に酔いしれてきた中間層などの離脱の意思表示である。

 かねてオバマ大統領自ら認めている富と所得の不平等拡大も続いており、それを是正する萌芽も見いだせない国民の不満が大統領や民主党に向けられたと言える。

 また、ミズーリ州ファーガソンの黒人暴動、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」への対応、エボラ熱の二次感染などの問題が、子供を持ち、社会の安全を願う母親たちの関心事となって浮上。オバマ政権の対応の遅さへの不満が募り、それが投票結果に表れた。

 オバマ大統領はイラクやシリアに米地上軍を派遣してイスラム国を掃討する考えはないことを表明している。だが空爆だけでは勢力は衰えず、米国内ではテロの懸念が高まっている。こうした消極姿勢では国内外の支持を得られまい。

 今回の選挙は、オバマ政権の政策に対する信任投票であったが、それ以上に指導力をはじめとする大統領の資質を問う雰囲気が、国民の間には強かったと言える。

 残りの任期で信頼回復を

 オバマ大統領は残された2年間、米国と世界の安定に向けて強い姿勢で臨み、信頼回復に努めねばならない。

(11月6日付社説)