サンゴ密漁、海上警備体制の一層の強化を


 世界自然遺産に登録されている小笠原諸島(東京都)や伊豆諸島(同)周辺の海域に中国漁船が大挙押し掛け、貴重なサンゴを密漁している。わが国の領海や排他的経済水域(EEZ)を我が物顔に荒らし回る、無法な密漁者たちを断固として排除しなければならない。

 乱獲する中国漁船団

 海上保安庁などの情報によると、小笠原諸島の周辺海域では9月から中国船とみられる外国漁船が増え始め、10月からは伊豆諸島近海でも急増。中には堂々と中国国旗を掲げる船も確認されている。

 菅義偉官房長官は4日の時点で、200隻を超える外国漁船が確認されていることを明らかにしている。

 中国漁船が密漁の対象としているのは、希少なアカサンゴである。小笠原諸島や伊豆諸島、沖縄周辺などの沖合、水深100~200㍍の海底に自生している。

 中国では「宝石サンゴ」として富裕層に人気があり、1㌔当たり150万円前後の高値で取引されているという。

 サンゴは中国近海では採取が禁じられている。一方、東京都が小笠原諸島でのサンゴ漁を許可しているのは地元の4業者のみ。採取に当たっては、生育環境を破壊しないように注意が払われている。

 このようなサンゴを中国の密漁船団は、ワイヤや漁網を使って乱獲している。わが国の主権を侵し、一攫千金のために世界的にも貴重な自然環境を破壊する無法行為を断じて放置することはできない。

海保は先月末、密漁の疑いで中国漁船の船長を逮捕した。だが、200隻を超える漁船を取り締まるには巡視船の数が少な過ぎる。

 太田昭宏国土交通相は「海上保安庁の巡視船を伊豆諸島に周辺に追加で派遣し、取り締まりを強化している」と述べたが、密漁船団をどこまで排除できるのか。

日本政府は中国政府に対し、遺憾の意を表明し、再発防止を強く求めている。中国外務省は関係部門が取り締まりを強めていると述べているが、どこまで本気かは分からない。

 中国漁船が白昼堂々と密漁を行うのは、海保は他の国のようにいきなり発砲してくることはない、捕まっても担保金を払えば釈放される、と考えているからだ。宝石サンゴは担保金や燃料費を差し引いても十分儲かるという計算があるのだろう。

 サンゴを守るには、密漁が費用対効果から見ても割に合わないことを知らしめることが第一だ。担保金の額を引き上げることを早急に検討すべきである。

 しかし、それ以上に重要なのは、海上保安体制の一層の強化である。

 海底資源守るためにも

わが国のEEZは世界第6位の広さを持つ。そこには、水産資源はもちろん、メタンハイドレート、海底熱水鉱床などの豊富な資源が眠っている。

 開発はこれからであるが、日本が今後、海底資源大国を目指すのであれば、それらを守る体制の整備が求められる。海上保安体制の強化は、そのような方向にも合致するものである。

(11月5日付社説)