新幹線50年、実績生かして世界に飛躍を
世界最速「夢の超特急」として東海道新幹線が開業してから50年を迎えた。同じ年に開かれた東京オリンピックとともに戦後日本の復興を象徴する事業だった。日本の大動脈となり、高度経済成長を支え、牽引(けんいん)した功績は大きい。
乗客の死亡事故ゼロ
東海道新幹線は毎日42万人が乗車し、ピーク時には東京駅から1時間に15本が出発する。分刻み秒刻みの運行を安全、正確に行う技術やノウハウは、日本の鉄道事業のみならず、国全体のクオリティーを象徴するものになっている。
この50年間に東海道新幹線が走った総走行距離は20億㌔、運んだ旅客は延べ56億人に上る。しかもその間、今日まで乗客の死亡事故を一件も起こさなかった。これまた世界に誇りうる実績である。
当時の最高時速210㌔については、そこまで速くする必要があるのかという声もあったという。だが、世界最速という「夢」が大きな原動力となった。
高速化への挑戦はその後も続き、車両も「0系」から始まり新型車両が次々登場した。開業時に東京-新大阪間4時間だった所要時間は、その後3時間10分となり、1992年に「300系」が導入されて「のぞみ」の最高時速が270㌔に到達したことで2時間半にまで短縮。現在は2時間25分となっている。
日本の鉄道の花形となった新幹線は、72年の山陽、82年の東北、上越の開業で全国に路線を延ばしていった。来年3月には、長野-金沢間の北陸新幹線も開業する。
新幹線網は、東京、大阪をはじめとした大都市圏と地方都市を結ぶ動脈となったが、地方の活性化という面では、当初期待されたほどではなかったとの見方もある。東京一極集中を促したことも否定できない。しかし、これから「地方創生」の時代に入れば、人、モノの流れの中でその本領を発揮することが期待される。
JR東海はリニア中央新幹線の2027年の開業を予定し、来年建設に着手する。これはまた新しい挑戦となる。
新幹線は、新たな時代に入ろうとしている。これまでの実績を踏まえ、日本の新幹線から世界の新幹線へと本格的に飛躍する時が来た。
新幹線の技術は既に、台湾高速鉄道(台湾新幹線)に導入されているが、ブラジルやベトナムへの新幹線輸出は、現地の事情で凍結状態となっている。
こうした中、8月末に来日したインドのモディ首相と安倍晋三首相との会談で、インドへの新幹線輸出に向けて一歩前進した。インド最大都市ムンバイと新興工業都市アーメダバードを結ぶ全長500㌔の高速鉄道建設計画の入札は、17年にも実施される。官民一体となって是非とも受注を獲得したい。
一層の環境性と安全性を
世界で高速鉄道建設の熱が高まっている背景には、まず途上国の経済発展がある。もう一つは、飛行機や自動車と比べて、鉄道の方が遙かにエネルギー効率が高い点がある。新幹線は消費電力の低減にも工夫を加えてきた。環境性と安全性はさらに向上させてもらいたい。
(10月8日付社説)