イスラム国掃討、問われるオバマ氏の指導力
オバマ米政権がイラクでイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」に空爆を加えてから2カ月になろうとしている。先月にはアラブの友好国と共同でシリア領内での空爆を開始した。
しかし、イスラム国の勢力は弱まる気配はない。米国内軍事関係者の間では地上軍派遣が必要だとの声も聞かれる。
懸念される外国人参加
オバマ大統領は先月開かれた国連総会の一般討論演説で、イスラム国などの過激派を「完全に撃破すべきだ」と強調。「暴力的な過激主義のがん」を根絶するため、国際社会が団結することを訴えた。
イスラム国は6月、一方的に「カリフ(預言者ムハンマドの後継者)」を最高指導者とする国家樹立を宣言した。この間に英国人の人権活動家、米国人ジャーナリストの首を切る映像をインターネットで公開、さらには人権活動家のイラク人女性を拘束して拷問後に公開で殺害するなど、その残忍さが全世界に強く印象付けられた。
オバマ大統領は自ら議長を務めた安全保障理事会の首脳級会合で、イスラム国などの戦闘に参加する「外国人戦闘員の活動を食い止めるために各国が強力な処置を講ずる」決議を、満場一致で採択。イスラム国や国際テロ組織アルカイダの流れをくむ組織などに約80カ国から外国人戦闘員1万5000人が参加していると指摘した。
イスラム国から出身国に戻った戦闘員によるテロも懸念されている。オーストラリアでは、無差別テロ計画に関与したとしてイスラム国関係者15人が逮捕された。日本でも、戦闘参加の準備をしていた北海道大学の学生の男らから警視庁が事情聴取を行った。「テロとの戦い」への一層の国際協力が求められる。
フランスや英国はイラクでの空爆に加わり、デンマークやオランダなどは参加方針を表明している。だが、いずれもシリア内への空爆は除外している。欧州諸国は今後の米国の動きを見極めようとしており、それまではシリア領内には関与しないという意思表示であろう。
米国人ジャーナリストが相次いで処刑されたことへの衝撃、恐怖感が手伝って、米国内主要世論調査の全てで65%以上が空爆を支持している。2001年9月の同時多発テロの際に見られたのと同様の意識の高まりが感じられる。
ただ、イラク戦争の二の舞いを避けたいとの思いはオバマ大統領には非常に強い。大統領も空爆の限界は十分分かっているが、よほどの事態にならない限り地上軍を送るつもりはないとみられている。
しかし、米軍幹部をはじめ中東、テロ対策の専門家の間では、地上軍を投入しなければイスラム国を打倒することは難しいと見る点で一致している。情勢次第では、軍の最高司令官としての大統領の決断が必要になることもあろう。
軍事的関与の強化を
オバマ大統領が「死のネットワークの廃棄に取り組む」ため、地上軍投入を含め軍事的関与を強化すれば、アラブ友好国や欧州諸国などが加わる有志連合の効率的な働きが期待できよう。大統領の指導力が問われる。
(10月7日付社説)