児童ポルノ禁止法改正案 規制強化は国際社会の要請
ジャーナリスト 宮城 二郎
臨時国会で成立期待
15日召集予定の臨時国会で、成立が期待されている法案の一つに自民、公明、日本維新の会の3党が参議院選挙前の通常国会で共同提出し、継続審議になっていた児童ポルノ禁止法改正案がある。
法改正の柱の一つは、現行法で規制されていない児童ポルノの単純所持を禁止することだ。「自己の性的好奇心を満たす目的」での所持に1年以下の懲役または100万円以下の罰金を科す規定を新たに盛り込んでいることが注目されている。
現行法が成立して以来、単純所持の禁止は常に論争の的となってきた。現行法は、個人が趣味で所有することを認めている。しかし、それは需要を生み出すことにつながり、児童ポルノ撲滅の妨げになっているとして、法改正を求める声が続いてきた。児童ポルノを重大犯罪と考える先進国の多くはすでに単純所持を禁止していることも、法改正支持派を後押ししている。
これに対して、「人権」を重視するリベラル・左派の政治家や弁護士らはこの動きに強く抵抗するが、その理由は本人が知らないうちにメールで送りつけられた場合、冤罪になるというのだ。しかし、内閣府が平成19年に行った世論調査では、単純所持禁止に約9割が賛成した。冤罪を生む可能性がどれほどあるのか、はなはだ疑問がある上、世論は冤罪の懸念よりも児童ポルノを厳しく規制し、その犠牲になる子供を少しでも減らすことに賛意を示していると言える。
同法改正案のもう一つの論点は、施行後3年をめどに、インターネット上の児童ポルノ閲覧や、わいせつアニメ・漫画について「必要な措置」を講じるとしている点だ。つまり、必要なら閲覧やアニメ・漫画も規制すべきだとしているのだ。
これについては、前述の政治家や弁護士だけでなく、出版界などからも「日本の貴重な漫画文化が破壊される危険性が非常に高い」として、強い反発が起きている。確かに、「表現の自由」は民主主義の根幹に関わる問題だから、その規制は慎重であるべきだろう。
改正躊躇の理由なし
その一方で、表現の自由は無制限に認められるものではないことにも留意が必要だ。日本も署名した国連の「国際人権規約」(自由権規約)は、表現の自由の権利行使には「別の義務及び責任を伴う」とした上で、(1)他の者の権利または信用の尊重(2)国の安全、公の秩序または公衆の健康若しくは道徳の保護のためには、一定の制限を課すことができると謳っている。
こうした原則の下、5年前に開かれた「第3回児童の性的搾取に反対する世界会議」(ブラジル)は、所持だけでなく閲覧も「犯罪」と位置付けるとともに、子供をわいせつに描いたアニメ・漫画も禁止すべきだとした「リオ行動計画」をまとめた。児童ポルノの単純所持の禁止はもとより、わいせつなアニメ・漫画を規制することは国際社会の要請でもあり、法改正を躊躇する理由はもはやないと言うべきだろう。