プーチン大統領の横に座るのは誰


 欧州連合(EU)首脳会談やG7サミット会議では会議最終日には記念撮影をすることがある。基本的にはホスト国を中心に女性政治家が近くに陣取ることが多い。ただし、政治の世界では謙虚さは特別褒められる性質ではないから、最前列に並ぼうとする厚かましい政治家もいる。最近では、参加者の名前が予め付けられているケースが増えた。

 敵対関係というか、批判合戦をしている同士が参加する会議の場合、ホスト国は神経を使う。独週刊誌シュピーゲル電子版によると、6月6日のノルマンデー上陸作戦の記念式典で「誰がプーチン大統領の傍に座るかで舞台裏でちょっとしたゴタゴタが生じている」というのだ。

 来月6日、第2次世界大戦最大の軍事行動、ノルマンディー上陸作戦70年目(Dデイ)の記念式典がフランスで開催される。連合軍は1944年6月6日、ドーバー海峡を渡ってフランス・コタンタン半島のノルマンディーに上陸し、ナチスドイツ軍と激戦を繰り返し、最終的にパリを解放する。第2次世界大戦最大の軍事作戦だ。
 独誌シュピーゲルによると、オバマ米大統領、エリザベス英女王をはじめ多数の首脳陣が参加する。その中にロシアのプーチン大統領も含まれているという。

 ところで、ウクライナ危機以来、プーチン大統領は欧米メディアから「現代のヒトラー」と比較されるほど、その評判は地に落ちている。オバマ米大統領やエリザベス女王が参加する米英政府から「式典ではプーチン大統領の傍の席にはしないでほしい」という要請がフランス大統領府に届いているという。

 国際社会から嫌われ者のプーチン大統領の記念式典の参加を強く支持したのはメルケル独首相だ。だから、プーチン大統領の傍の席にメルケル首相が座ればいい、という声が強い。メルケル首相自身もプーチン大統領の傍の席でも問題がないというから、最悪の事態は回避できる見通しという。
 プーチン大統領は独語も話せるからメルケル首相にとって話し相手としては退屈しない。ちなみに、ウクライナからポロシェンコ新大統領も招待されている。

 ついでに、オバマ大統領やエリザベス女王がプーチン大統領の傍の席に着いた時を考えてみよう。対ロシア制裁を実施する欧米諸国の首脳の場合、何をテーマにプーチン氏と話せるだろうか。
 「プーチン大統領、われわれの制裁の効き目はどうですか」などとは聞けないから、せいぜい天候の話しかできなくなる。相互に批判を繰り返した手前、気まずい思いがあるだろう。だから、「できればプーチン大統領の傍には座りたくない」と考えても不思議ではないわけだ。

 参考までに、オランド仏大統領は記念式典前日、プーチン大統領をエリゼ宮殿に招いて非公式の会談をするなど、ロシア側にも気を使っているという。

(ウィーン在住)