人口減少と「自由民主」、若年雇用と女性議案を宣伝
婚期早める社会の創出を
日本人が減少している。「こどもの日」を前に総務省が発表した14歳以下の子供の人口は1633万人で33年連続で減少。民間有識者による「日本創成会議」が8日に発表した2040年の市区町村別人口推計では、半数の896自治体で出産の中心的年齢層である若年女性(20~39歳)が半減し、そのうち523自治体は「消滅の可能性が高い」という。
が、子供を増やす政策は乏しい。これまで女性政策は社会進出に力点が置かれ、問題を「差別」と捉えた社民党(旧社会党)や共産党が先行した。左翼系女性運動は平等主義が行き過ぎ、男女の医学的性差をも超然とする「ジェンダーフリー」という過激な自由主義に走った。少子化対策は産む数を増やすことでも、「産む役割」に「女性差別」の批判が起きた。
しかし、さすがに人口減少に直面し、働きながら子育てできる制度を整えるなど間接的ながら「出産」へのアプローチが増えている。自民党機関紙「自由民主」(5・27)1面は、「女性の輝く日本つくる」「女性が活躍できる社会環境整備推進法案を了承」との同党女性活力特別委員会の記事。「女性の活躍は、少子高齢化が急速に進むわが国にとって不可欠であり、安倍内閣も成長戦略の中核に位置づけている」(リード)として、女性の社会活動のため家事・子育て・保育などの支援充実化が法案の主要な柱になった。
同紙は5月6・13日号でも「女性の活力発揮へ議員立法目指す」「意識改革で仕事と子育てを両立」の記事を載せた。ただ、これで人口減少は回避できるのか、深刻な人口推計を前に疑問が湧く。結婚は若い男女に期待されるし、出産なくば女性の就労環境を良くしても両立させたい「子育て」もない。
同じページに同党雇用問題調査会の記事「若者の雇用対策に関する『提言』策定」が載るが、こちらの方が結婚には有効かもしれない。記事によれば「提言は『未来を創る若者雇用・育成の総合的対策を』と題し、少子高齢化の進展による生産年齢人口の減少が、持続的な経済成長の妨げにならないよう、若い世代が長期的に能力を発揮し、安定した収入が見込める就業機会を得ることができるようにするもの」で、直接的には経済・雇用政策だ。が、収入の安定が結婚の前提となる現実もあり、若年雇用の安定化は婚期を逃さない可能性を高くする。
提言の対策六つのうち「②学校での就職準備段階における職業意識の醸成・確立③就職活動段階での適格なマッチングの実現」は教育に関わることだが、国民投票法を機に18歳成年が論議されているところ、高卒就職の社会人が活躍する雇用社会を期待したい。
早いスタートで職能的専門教育を高め、技能・資格の取得率を向上させ、早い就職が有利になる学歴偏重を是正した雇用環境を築けば、少子化の一因となる家計負担が重い教育費を伴う高学歴社会、晩婚化の弊害を緩和できよう。教育制度と就職と身体的な結婚適齢年齢とが噛(か)み合い、晩婚化をもたらす高学歴化のタイムラグを是正する社会の創出を考えるべきだ。