日米韓首脳会談、対北抑止へ関係改善を急げ


 オランダのハーグで安倍晋三首相、オバマ米大統領、韓国の朴槿恵大統領による3カ国首脳会談が開催された。最大の成果は、北朝鮮問題を中心とした東アジアの安全保障について、3カ国が一層緊密に連携していく重要性を確認したことである。

 北が弾道ミサイル発射

 オバマ大統領という第三者を交えたとはいえ、安倍首相と朴大統領の正式な会談は初めてだ。45分間の会談中、歴史認識についての言及はなく、東アジアの平和と安定をどう確保するかという未来志向のテーマに集中した。

 会談が成功した理由の一つとして、日韓関係の悪化を懸念して仲介役となったオバマ大統領の努力が挙げられよう。オバマ大統領は会談の冒頭で「韓国と日本は米国の世界で最も緊密な同盟国の二つだ」と述べ、とりわけ北朝鮮問題で3カ国が連携する重要性を強調した。

 核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威が高まる中、“内輪もめ”をしている余裕はないとの認識で3カ国が一致したことは前進である。

 北朝鮮は中距離弾道ミサイル「ノドン」とみられるミサイル2発を日本海側に発射した。ほぼ同時刻に行われた日米韓首脳会談への牽制(けんせい)が狙いだが、地域の緊張を高めるものであり許されない。菅義偉官房長官が「日朝平壌宣言や6カ国協議共同声明、国連安保理決議に違反する」と非難したのは当然だ。

 日本との局長級協議の再開決定や約3年ぶりの南北離散家族再会事業実施など対話姿勢を示す一方、北朝鮮は2月下旬以降、米韓合同軍事演習に対抗し、短距離ミサイルやロケット弾を相次いで発射していた。安倍首相は会談後、記者団に対して「未来志向の日韓関係に発展させていく第一歩にしたい」と述べたが、北朝鮮が挑発行為をエスカレートさせないよう関係改善が急がれる。

 ただ忘れてならないのは、韓国の日本に対する基本姿勢は変わっていないことだ。韓国側の「反日」と対日不信が根強いことは、朴大統領が安倍首相との会談ではなく、オバマ大統領を交えた3カ国首脳会談の形にしたことからもうかがえる。朴大統領は歴史問題では日本と妥協しない構えで、日韓首脳会談のめどは依然立たない。

 しかも3カ国首脳会談は、韓国政府が「受け入れた」(韓国メディア)との立場で、米国の呼び掛けにしぶしぶ応じたものだ。ケリー米国務長官が2月に訪韓した際、韓国は日本との関係改善を促されており、今回の会談も米国の顔を立てたという形にしている。

 懸念されるのは、ハーグでの核安全保障サミットに先立って行われた朴大統領と中国の習近平国家主席による中韓首脳会談での両国の緊密ぶりだ。会談では、歴史問題で「反日共闘」を行う姿勢が示された。

 朴大統領は大局的判断を

 確かに、北朝鮮問題で中国が果たすべき役割は大きい。しかし、朴大統領が自由と民主主義の価値観を共有する日本との関係より価値観の異なる中国を重要だと考えているとすれば残念だ。朴大統領には大局的な判断を求めたい。

(3月27日付社説)