改憲意見書、地方議会から国会での審議に
石川県、富山県、香川県、愛媛県などの県議会で憲法改正の早期実現を求める意見書が採択されている。
地方議会の改憲意見書は国会での改憲原案提出や審議を後押しするものである。こうした地方の声を踏まえ、国会各党派は改憲に向けた具体的な取り組みを強化すべきだ。
自民が採択を働き掛ける
自民党が地方議会に意見書の採択を働き掛けているのは、改憲には国民投票で過半数の賛成を得ることが必要なためだ。各世論調査で改憲を肯定する意見は否定よりも多くなっている。しかし、国民運動では戦後世論を支配した、改憲を認めない「護憲」運動が先行しているのが実情だ。
このため、改憲の必要性を主張する政党は自民党に限らず、地方議会でも改憲意見書採択の運動を積極的に進め、国民の間に機運を盛り上げていくことが望ましい。
香川県議会で20日に採択された意見書は、憲法がおよそ70年も改正されていないことを指摘し、「とりわけ、大規模災害への対応をはじめ、家庭、環境等の諸問題など、憲法制定当時には想定もできなかった事態への対応が求められている」と述べている。
我が国は3年前に東日本大震災を経験した。「大規模災害への対応」は地方自治体にとっても大きな課題だ。
巨大地震と大津波、原発事故によって、被災地は各県をまたぐほど広範囲となり、自治体の対処能力を超えた。しかも、役場や首長が被害に遭うなど行政機能が麻痺した。
このような事態に国家による強力な救済活動を行い得るようにするため、憲法に緊急事態対処規定を盛り込むことを求める意見が地方から起こるのは当然である。
内閣府の有識者会議が想定する南海トラフ地震の被害規模は、死者が全国で約32万人、避難者は約950万人、全壊・焼失戸数は約239万戸に上る。こうしたデータに基づいて被害が想定される各都府県では独自に被災規模を算出するなど、関心は高い。
また、大阪維新の会の大阪都構想実現に向けた動きが起きているように、今後は国から地方へ権限を移譲する地方分権改革を求める声が強まろう。都道府県制から道州制への移行も議論に上って久しい。憲法に道州制を明記するように要請する議論が地方から起きても不思議ではない。
香川県議会の意見書は「我が国を取り巻く東アジア情勢は、一刻の猶予も許されない事態に直面している」としている。我が国は6852の島を有している。離島を持つ地方自治体の議会では中国の海洋進出などを踏まえ、安全保障の観点から改憲を求める意見書を提出することもあり得よう。
多くの提出で国を動かせ
これらの意見書をめぐる議論が地方議会でなされることによって改憲論議に弾みを付けていくべきだ。地方自治法99条に定められた政府や国会への意見書の提出は、数が集まれば国民世論の目安となって国を動かすことになる。
(3月28日付社説)