G7首脳会議、対露政策で結束が問われる


 日米など先進7カ国(G7)首脳会議が、核安全保障サミットが開かれたオランダ・ハーグで行われ、「ハーグ宣言」が採択された。

 露のG8参加停止を表明

 G7首脳会議はオバマ米大統領の提案で開催された。ハーグ宣言は、ロシアによるウクライナ南部クリミアの編入について「違法な試みを強く非難し、承認しない」と強調。ロシアが姿勢を改めるまで主要8カ国(G8)への参加を停止し、6月にロシアのソチで開かれるG8首脳会議をボイコットすることを表明した。

 ロシアはすでに編入の法的手続きを完了させた。ウクライナ新政権がクリミアに駐留するウクライナ軍に撤収命令を出すことを決定したため、クリミア半島は軍事面で完全にロシアの支配下に入った。

 国際秩序を踏みにじったロシアに、G8の一員である資格がないのは明白だ。態度が変わらなければG8からの除名も検討する必要がある。

 G7はソチでのG8首脳会議の代わりにベルギーのブリュッセルで首脳会議を開き、ウクライナ問題を中心議題とすることを決めた。4月末にモスクワで開かれる予定のG8外相会合についても各国外相に対して不参加を呼び掛けた。「ロシア外し」によってクリミア編入を取り下げるようロシアへの圧力を強める構えだ。

 これに対し、ロシアのラブロフ外相は「G8は会員カードのない非公式クラブ。誰かが誰かを追放することはできない」と述べ、G7を批判した。だが、このままでは国際社会におけるロシアの信頼は失われるばかりだろう。

 宣言はまた、「分野別の制裁を含む行動を強化する用意がある」と警告。ロシアがクリミアに続いてウクライナの南部や東部に介入すれば、金融やエネルギー、防衛産業などの重要分野を狙った制裁を発動する構えを示した。

 ロシアと密接な経済関係を持つ欧州連合(EU)内には、大規模な制裁をためらう声も根強い。しかし、ロシアの力による現状変更の試みを許すわけにはいかない。

 ロシアがクリミア編入に踏み切ったのは、たとえ編入しても、欧米は強力な制裁を打ち出せないだろうと判断したためだ。その意味で、G7の結束が問われている。安倍晋三首相は連携強化に向け、積極的な役割を果たすべきだ。

 G7がロシアを排除し、重要な政治問題に関する首脳会議を開催するのは、「G8」の呼称が定着した1998年のバーミンガム・サミット(英国)後初めてとなる。今回のG7首脳会議は今後の世界情勢を占う上での分岐点となる重みを持ったものだと言える。ウクライナをめぐるG7とロシアの対立を、新冷戦時代の幕開けと表現する向きもある。

 米国は指導力発揮を

 G7首脳会議を敢えて核サミットの間に開催することを提案したのがオバマ米大統領であるだけに、米国はハーグ宣言の履行に向け、G7をまとめあげ、指導力を発揮しなければならない責務がある。