漂着した軽石の活用アイデア続々、専門家も評価


「資源循環の好例」、釉薬や土壌改良、水質浄化にも活用

漂着した軽石の活用アイデア続々、専門家も評価

軽石を釉薬(ゆうやく)として使った壺屋焼を手に持つ相馬正和さん=6日、沖縄県読谷村

漂着した軽石の活用アイデア続々、専門家も評価

コーヒー農園で軽石を土壌改良に活用する宮出博史さん=7日、鹿児島県伊仙町

漂着した軽石の活用アイデア続々、専門家も評価

小笠原諸島の海底火山から噴出し、海岸に漂着した軽石=11月11日、沖縄県大宜味村(小型無人機で撮影)

 小笠原諸島の海底火山噴火により各地に漂着した大量の軽石は、漁業や観光業に影響を及ぼす一方、活用への模索が始まっている。釉薬(ゆうやく)の材料や畑の土壌改良に使うなど、さまざまな取り組みが行われており、災害廃棄物の再利用に詳しい専門家は「資源循環の好事例だ」と評価する。

 大量に押し寄せた沖縄県では、回収された軽石が漁港などに山積みされたままだ。廃棄処分に費用が掛かるため、再利用の道が検討されているが、高濃度の塩分やもろさがネックとなっている。

 そうした中、神奈川県立産業技術総合研究所などの研究チームが、軽石の表面を吸着材に使われる「ゼオライト」の結晶に変える実験に成功した。小野洋介主任研究員は、海面に浮かべて水質浄化などに活用できる可能性があると説明。「実用化には企業の参入が必要だが、放射能汚染水の処理にも使えるかもしれない」と話す。

 鹿児島県の徳之島でコーヒー農園を営む宮出博史さん(45)は、浜辺で回収した軽石の塩分を洗い落とし、畑の土壌改良に使い始めた。「水はけが良くなり、大雨で実がはじけて品質低下するのを防げそうだ」と期待する。断熱性に着目し、焙煎(ばいせん)小屋の壁材として活用することも考えているという。

 沖縄県読谷村の窯元相馬正和さん(72)は、すりつぶした軽石を伝統の焼き物「壺屋焼」の釉薬に使ってみたところ、深みのあるあめ色に焼き上がった。「想像以上にぴったりの素材」と喜び、火山に由来することにちなみ「マグマ釉」と命名。「沖縄の焼き物には過去300年間、サンゴやもみ殻といった土着の材料が使われてきた。邪魔者扱いの軽石も工芸の世界で生かすことができる」と自信を深める。

 沖縄県も企業などからアイデアを募集。道路舗装や人工漁礁の資材など約50件の案が寄せられ、実効性を精査する方針だ。

 こうした取り組みについて、京都大大学院の浅利美鈴准教授(環境工学)は「工夫によって新しい価値が生み出され、廃棄物が資源として循環していく好事例だ」と評価。「人の知恵は無限大。ごみと思えばそれまでだが、少し立ち止まって考えれば見方は変わってくる」と話した。