熊本地震5年 コロナ禍での災害対応が課題


 観測史上初となる2度の震度7を記録した熊本地震から5年を迎えた。

 圧死など地震による直接死は50人。被災後の疲労やストレスなどによる関連死はこの1年で1人増え、犠牲者は熊本、大分両県で計276人となった。

多かった車中泊の被災者

 インフラ面では、鉄道と道路がほぼ復旧。崩落した阿蘇大橋(南阿蘇村)も架け替えられ、3月に開通した。一部で不通が続く第三セクターの南阿蘇鉄道は、2023年夏の全線再開を目指す。

 甚大な被害を受けた熊本城の天守閣も完全復旧した。耐震性を高めるため、最新技術を駆使した補強工事を実施。「復興のシンボル」と位置付けられた天守閣が、より安全に強く生まれ変わったことを喜びたい。

 地震で多くの人々が住宅を失ったが、5年間で自宅の再建や災害公営住宅への転居などが進んだ。熊本県によると、3月末時点の仮設住宅入居者は150世帯418人で、ピーク時(4万7800人)の0・9%となった。ただ、災害公営住宅に暮らす1657世帯のうち、高齢者世帯の割合は51%に上る。行政や地域住民らのサポートが欠かせない。

 熊本地震から得るべき教訓は多い。熊本市の大西一史市長は本紙の対談企画で、震度7を2度記録したことについて「少なくとも1発目が来たら、次はもっと大きいのが来るかもしれないというのを熊本地震の教訓として活(い)かさなければならない」と述べている。

 多くの住民が車中泊を余儀なくされ、エコノミークラス症候群で亡くなった人もいる。車中泊が増えたのは、一部の指定避難所が損傷して使用不能になったことや、震度7の地震が2回続いたことで、余震を恐れて自宅に戻るのを避ける人が多かったためだ。

 もっとも車中泊の場合、支援情報や救援物資も届きにくくなる。車中泊を減らすには、避難所の耐震強化も求められる。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、災害時に自治体が感染を恐れる被災者の車中泊にどのように対応するかは深刻な課題となっている。

 熊本県では昨年7月、記録的な大雨で南部の球磨川が氾濫して大きな被害を出した。避難所では感染防止のために収容人数の制限が行われ、消毒や検温を徹底した。それでも、感染への不安から車中泊をする人も多かった。車中泊の人と場所をいかに把握するかが問われよう。

 記憶の風化も大きな課題だ。熊本市が昨年12月に意識調査を実施したところ「地震の記憶や教訓を忘れがち」と答えた人が68%に上った。学校での防災教育や家庭の防災対策を強化する必要がある。

自衛隊と米軍の連携を

 熊本地震では2万5000人の自衛隊員が派遣され、救出活動に当たった。また、在日米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ2機が救援物資を輸送した。被災地支援活動にオスプレイが投入されたのは、熊本地震が初めてだった。

 災害派遣でも、自衛隊と在日米軍が連携を強化していくことを期待したい。