米中会談 バイデン氏は強硬路線を貫け


 米アラスカ州アンカレジで米中外交トップによる初の直接会談が行われた。人権や安全保障などの問題で対立が鮮明になる一方、気候変動問題など利益が重複する分野では協力を模索していく姿勢を確認した。だが中国は協力の見返りに、米国に追加関税などの強硬策を撤回させようとしている。米国は足元を見られないようにすべきだ。

 1時間以上も非難の応酬

 会談には、米側からブリンケン国務長官とサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)、中国側からは楊潔箎共産党政治局員と王毅外相が出席。冒頭、報道陣の前で1時間以上も非難の応酬を繰り広げる異例の展開となった。

 ブリンケン氏は、中国が「世界の安定を維持するルールに基づく秩序を脅かしている」と批判。これに対し、楊氏は「新疆ウイグル自治区、チベット自治区、そして台湾は中国の不可分の領土であり、内政への米国の干渉には断固として反対し対応する」と強調した。

 中国共産党政権は、少数民族の独自の文化を否定する同化政策を強行。香港では国際公約である「一国二制度」を骨抜きにし、民主派弾圧や選挙制度変更などで高度な自治を侵害している。さらに台湾統一に向け、武力行使も辞さない方針だ。人権や安全保障の観点から断じて容認できない。米国が中国を批判したのは当然だ。

 一方、中国は地球温暖化などの問題では協力的態度を示す駆け引きを展開した。バイデン米大統領が2月の外交演説で「米国の国益にかなうなら中国と協力する用意がある」と述べたことを好機と捉えたためだ。

 米中は今回の会談で「対話と意思疎通の維持、互いに利益となる協力の推進」を通じ、両国関係を健全で安定的に発展させることで合意。気候変動のほか、イラン、アフガニスタン、朝鮮半島、ミャンマーなど個別の問題で協調を強化するという。

 しかし、米国には対中外交で苦い経験がある。2015年9月に当時のオバマ大統領との会談で、習近平国家主席は「南シナ海を軍事拠点にする意図はない」と述べたが、実際は人工島を造成して飛行場建設やミサイル配備などを行っている。

 バイデン氏はオバマ政権で副大統領を務めていた。中国に甘い対応をすれば、覇権拡大の時間稼ぎをさせるだけだ。トランプ前政権が敷いた対中強硬路線を貫く必要がある。

 ブリンケン氏は会談後、同盟国や友好国の懸念も中国に伝えたと表明。中国海警船による沖縄県・尖閣諸島沖の領海侵入にも言及したとみられる。

 日本も厳しい対中姿勢を

 バイデン政権は同盟国との連携や国際機関との協調、自由・民主主義の価値の強調を通じ、対中包囲網を構築することを目指す。日韓両国との外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)や、オンライン形式での日本、オーストラリア、インドとの4カ国首脳会談もこうした戦略の一環だ。

 日本も米国との同盟強化に努め、他の民主主義国家との連携を強めるとともに、中国には人権問題などでもっと厳しい姿勢で臨むべきだ。