緊急事態解除 引き続き感染対策徹底しよう


 新型コロナウイルス対策として首都圏1都3県に発令されていた緊急事態宣言がきょうを期限に解除される。新規感染者の下げ止まりや増加の傾向が見られる中、リバウンド(感染再拡大)を抑えるため、政府や自治体は可能な限りの手段を講じ、国民一人一人が引き続き感染対策を徹底していく必要がある。

 首都圏などで増加の兆候

 1月7日から2度にわたって延長された宣言は約2カ月半ぶりの全面解除となる。首都圏や関西圏、宮城県などで感染者増の兆候がある中、宣言を解除する背景には、延長しても効果に疑問があり、それによる経済的デメリットと比較して、デメリットの方が大きいとの判断があったとみられる。

 首都圏の逼迫(ひっぱく)していた医療提供体制が改善したことも大きい。菅義偉首相は、宣言解除の目安とした「ステージ3」(深刻度上から2番目)相当を下回っていることから「基準を安定して満たしており、解除の判断をした」と説明した。

 感染収束の「切り札」となるワクチンの高齢者への接種開始まで20日余りの期間、リバウンドを抑え、医療提供体制を保持していかなければならない。

 政府は解除後の対応として、飲食店などでの感染対策、変異株の監視体制強化、感染拡大の予兆探知のためのモニタリング検査、ワクチン接種の推進、次の感染拡大に備えた医療提供体制の充実――の5本の柱を決定した。

 飲食店の時短営業は今月いっぱい「午後8時まで」を「午後9時まで」とするが、4月以降については、感染状況を見ながら首都圏知事と政府が調整していく。感染対策と経済活動の両立のポイントとなる問題だけに慎重な判断が求められよう。

 感染拡大の兆候をいち早く探知するための無症状者のモニタリング検査は来月に1日5000人規模とする。感染急拡大の動きが見られた場合は、宣言に準じた対策が可能な「まん延防止等重点措置」を実行するなど素早い対応が重要だ。

 今後懸念される問題に、変異ウイルスの感染拡大がある。感染力がより強いと言われている変異株の拡大がリバウンドの引き金にならないよう監視体制を強化していかねばならない。

 変異株の発生状況を把握するスクリーニング検査は現在、全陽性者の5~10%程度だが、今後は40%程度に引き上げる予定だ。しっかり監視し、迅速な対応が取れる態勢を整えておく必要がある。

 もう一つ不安が残るのは、宣言解除とともに人々の警戒心が緩んでしまうことだ。小池百合子東京都知事は、緊急事態宣言の解除に関して「『解除』の2文字によってまた人の流れが増えるのではないか心配される。引き続き徹底した対策を進めていく必要がある」と強調した。

 身近なウイルスに警戒を

 2カ月以上の自粛疲れもある。特にこれからは花見や歓迎会のシーズンになり、人々の接触の機会も増える。人と出会えば、つい会話に熱中し警戒心も薄れてしまう。アルコールが入ればなおさらだ。しかし、新型コロナウイルスはすぐ身近にあることを忘れてはならない。