“2人勝ち”経済


地球だより

 もう何年も前だが、韓国大手企業のサムスン電子に入社した新入社員が早朝から深夜まで続く勤務に耐え切れず、いつ会社を辞めようかとばかり考えていたが、自分の口座に振り込まれる給与の多さにそれまでの疲れが一瞬にして吹っ飛び、またヤル気を起こして出社する、という話を聞いたことがある。世界的ブランドに上り詰めた一流企業らしいエピソードだなあと感心したのを覚えている。

 そのサムスン電子を中核とするサムスングループと現代自動車グループのいわゆる2大財閥の寡占がますますひどくなっていることがこのほど分かり、話題になっている。一昨年、韓国全企業に占める2大財閥の割合を見たところ、純益で35%、時価総額で37%、営業利益で22%という突出ぶりだった。しかも年々この割合が増加傾向にあるというから恐れ入る。こうなると韓国経済は“1人勝ち”ならぬ“2人勝ち”だ。

 だが、これは誰が見てもいびつな構造だ。「サムスンと現代自がこけたら韓国経済全体がこける」ためだ。サムスンはかつて半導体、その後は液晶パネル、現在はスマホで稼ぎまくっている。日本企業にはとても真似(まね)できない巨額投資で競争力のある製品に集中したが、稼ぎの大半は輸出。現代自も北米市場向けを中心に輸出が多い。グローバル競争時代ではいつ“落日”が訪れるか分からないものだ。

 地元メディアは、世界的なIT企業だったノキアが他社との競争の末、マイクロソフトに買収され、フィンランド経済が低迷し始めたことを教訓とすべきだとし、「サムスンなき経済に備えよ」と警鐘を鳴らしている。

(U)