韓国保守系歴史教科書、左翼の圧力で採択ゼロか
抗議や脅迫など受ける
左翼史観の根強い韓国で新たな試みとして注目を集めていた保守系執筆陣による高等学校歴史教科書が、左翼団体からの執拗(しつよう)な圧力で現場の新年度教科書に全く採択されない見通しとなった。子供の健全な歴史認識育成に「左翼の壁」が立ちはだかった形だ。
(ソウル・上田勇実)
「国定教科書復活を」の声も
採択ゼロが濃厚となったのは教学社が出版した高校歴史教科書「韓国史」。これまでに全国で二十数校が一度は採択を決めながら方針を撤回し、最後に残っていた全州市(全羅北道)の象山高校など3校もこのほど相次いで採択を取り消した。
象山高校の場合、地理的に左翼色が濃い全羅道の学校でありながらバランス感覚を養うためにわざわざ他の教科書と共に教学社の教科書を採択しようとしたが、「親日教科書」などの汚名を着せられ、生徒や父兄の間に不安が広がったことで、やむを得ず採択を断念したという。
採択校が取り消しに追い込まれたのは、親北反米の偏向的な理念教育で知られる全国教職員労働組合(全教組)や親日人名事典を発刊した民族問題研究所など左翼団体が組織的に採択反対運動を展開したためだ。該当する高校に直接訪問して正門前で抗議集会を行ったり、脅迫まがいの嫌がらせ電話をかけまくったりして相手が音を上げるまで圧力をかけ続けたとみられている。
教学社の「韓国史」は、左翼史観で凝り固まった左翼学者たちとは理念的に正反対に位置する保守系の学者が執筆に参加したことで、昨年から大きな話題となっていた。検定に合格した高校歴史教科書8種のうち5種は左翼史観、2種は中立的史観とされ、保守的史観の教科書として唯一登場したのがこの教科書だった。
教育省のまとめによると、1月9日現在、採択する歴史教科書を決めた全国1714の高校(高校は全国で約2300校)のうち左翼史観の5種を選んだ学校が実に9割の1538校に達した。いかに現場の歴史教育が左傾化環境に置かれているかが分かる。
これら左翼史観の教科書の記述が問題視されるのは近現代史の部分だ。例えば2008年以降の北朝鮮による武力挑発について「ミサイル発射、核実験強行、延坪島砲撃事件などが続いた」とし、一部左翼勢力がいまだに北朝鮮の仕業とは認めていない「哨戒艦撃沈事件」が抜け落ち、これを読んだ生徒はこの事件が北朝鮮の蛮行だったことを認識できない恐れがある。
また過去の政権に対する評価について書かれた左翼史観の教科書と教学社「韓国史」の記述を比べると、前者は盧武鉉政権を肯定的、李明博政権は否定的にそれぞれ記述しているが、後者はその逆。まるで左派系新聞と保守系新聞の社説を読み比べた時に感じるほどの違いだ。
検定に合格した教科書の採択が外部の圧力で相次ぎ取り消しとなった事態に保守陣営からは「教科書検定制度が葛藤・分裂をもたらす不要な論争を巻き起こすなら、民族の将来と未来の世代のためにも国定教科書に戻すことを真剣に話し合うべきだ」(与党セヌリ党の崔炅煥・院内代表)といった声も出始めている。