野田虐待死判決、重く受け止め悲劇を防げ
千葉県野田市で昨年1月、小学4年の栗原心愛(みあ)さんを虐待して死亡させたとして、傷害致死などの罪に問われた父勇一郎被告の裁判員裁判で、千葉地裁は懲役16年の判決を言い渡した。
「凄惨で陰湿」と断じる
判決によると、勇一郎被告は2019年1月22~24日、心愛さんを自宅の浴室に立たせ続けた上、顔に冷水シャワーを浴びせ続けるなどの暴行を加えて衰弱させ、飢えやストレスによるショック、致死性不整脈、溺水のいずれかで24日夜に死亡させた。心愛さんは約1年7カ月にわたって虐待を受け、食事や睡眠、トイレなどの生理現象も制限されていたという。
遺体は胸の骨が折れ、数え切れないほどのあざがあり、肺には水が入っていた。判決が「尋常では考えられないほどに凄惨(せいさん)で陰湿な虐待だった」と断じたのは当然だ。
被告と弁護側は日常的な虐待を否定して「しつけが行き過ぎてしまった結果だ」と反論していた。しかし、子供を死なせるほどの暴力を「しつけ」というのは、あまりにも手前勝手な言い分である。判決は被告の供述について不整合で信用できないとして「反省が見られない」と非難。暴行が長期間に及び悪質性が極めて高いとして、過去の児童虐待死事件と比べても重い懲役16年の判決を言い渡した。
前田巌裁判長は「社会からも身内からも助けてもらえないまま、愛情を注がれるはずの実父から理不尽極まりない虐待を受け続け、絶命した心愛さんの悲しみ、無念さは察するに余りある」と述べた。全ての親、そして大人が重く受け止めなければならない言葉である。
心愛さんは17年11月、学校のアンケートに「お父さんにぼう力を受けています」と回答。県柏児童相談所に一時保護されたが、同年12月に保護が解除された。行政の対応を検証した県の第三者委員会は、児相が援助の方向性を議論する「判定会議」を開かずに保護解除を決めたことや、市教委が父親の要求に応じてアンケートを渡したことなどを問題点として列挙。「勇気を持って(虐待を)訴えた女児は何としても守られるべきで、救える命だった」と強調した。
これ以上、悲劇を繰り返してはならない。虐待防止に向け、まずは児相の体制強化や職員の専門性向上が求められよう。児相のほか、学校や警察、医療機関などの関係機関が一層の連携強化を図り、虐待を見逃さないようにすることも必要だ。
警察が昨年摘発した児童虐待事件は1972件、被害に遭った18歳未満の子供は1991人で、いずれも過去最多を更新した。生命の危険があるなどとして警察が緊急で保護した子供も5553人(前年比982人増)に上る。将来の社会を支える子供たちが、虐待で心身に大きな傷を負うことは、日本にとって大きな損失である。
育児の重要性を教えよ
児童虐待増加の遠因には、個人主義が蔓延(まんえん)する中で家族や地域の絆が弱まっていることも挙げられよう。結婚して子供を授かり、育て上げることが、どれほど貴く重要であるかを、家庭や地域、学校でしっかりと教えていくべきだ。