宇宙空間に監視網構築を


米戦略予算評価センター クラーク上級研究員

極超音速ミサイルの脅威

 米シンクタンク、戦略予算評価センターの海軍アナリスト、ブライアン・クラーク上級研究員はこのほど世界日報社の取材に応じ、中国が米空母などを標的とする極超音速巡航ミサイルの技術を完成させ、南シナ海などの係争地域へ配備した場合、宇宙配備型のセンサーや無人偵察機などによるミサイル監視網を強化し対応する必要があると主張。また、戦力を分散させるなどの戦術上の対応を迫られる可能性も指摘した。

クラーク氏

クラーク氏

 音速の5倍(マッハ5)以上の速度で爆撃機などから発射される極超音速巡航ミサイルは、極超音速滑空飛翔体とともに現在のミサイル防衛(MD)で迎撃するのは極めて困難とされている。開発を進める中国が実戦配備をすれば、米中の軍事バランスを変える可能性がある。

 クラーク氏は、極超音速巡航ミサイルの脅威への米海軍の対応策について「探知、追跡を可能にすることが大きな課題」だと強調。地上のレーダー網で探知が困難な極超音速ミサイルに対応するため、宇宙や高高度の上空からの監視体制を強化する必要があるとした。

 具体的には、トランプ政権が「ミサイル防衛見直し(MDR)」で示した宇宙空間にセンサー類を配置する構想について、「極超音速兵器を追跡する上で最も有効な手段だ」と評価し、推進すべきだと強調。また、昨年に実戦配備された高高度を飛行する米海軍の無人偵察機「MQ-4C」について「艦船をめがけて飛んでくる巡航ミサイルを実際に見下ろすことができる」とし、さらなる投資を行う必要があると述べた。

 一方、ビル・モラン海軍作戦副部長は、中国が南シナ海などに極超音速兵器を配備した場合の米海軍の対応について、本紙の取材に「機密事項なので回答できない」と述べた。これに関して、同氏は1月、記者団に「軍事力をいかに展開するかの計算を一部、変更する」と語っていた。

 この戦力の展開方法についてクラーク氏は「的を絞らせないようにより分散された形で配備させる可能性がある。また、ミサイルを監視するセンサー網との連動性を高めることも求められる」との見方を示した。

(ワシントン 山崎洋介)