アマゾン熱帯雨林の消失、5兆㌦以上の世界的損害にも


 今月発売の「自然気候変動ジャーナル」によると、ブラジル政府がアマゾン熱帯雨林の消失に対して有効的な対策を取らない場合、世界各国にかつてないほどの損害を与える可能性があることが分かった。ブラジルメディアが報じた。

 同誌は、ブラジル政府がアマゾン熱帯雨林を保護するための法律整備などを加速する必要があると主張。必要とされる対策が取られずに温室効果ガスが増えて世界の気温が2度以上上昇した場合、世界各国が5・2兆㌦(約580兆円)以上の経済損失を受けると説明している。

 気候変動対策に関しては、世界各国がパリ協定を通じて到達目標を設定しているが、ブラジルの役割は熱帯雨林の保護による温室効果ガスの抑制にある。

 同誌に寄稿された記事は、「政治的な駆け引きが気候緩和に与える脅威」と題されたもの。リオデジャネイロ連邦大学(UFRJ)などブラジルの三大学による合同調査チームが、森林伐採を原因とした温室ガス効果の上昇が、世界に与える影響を経済的な数字としてまとめた。

 記事によると、世界各国による温室ガス抑制を「コスト」として計算した場合、温室ガスの上昇抑制に失敗した場合、損害は抑制にかかるコストの三倍以上になるという。また、調査チームは、ブラジル政府が2011年からこれまでの間に、少なくとも100億㌦(約1100億円)をアマゾン熱帯雨林の保護に投じる必要があったと試算した。

 ブラジルのテメル大統領は、今年に入ってから、ブラジル国内の気候変動対策会議メンバーとの会談を2回続けてキャンセルしている。同メンバーは、テメル大統領にパリ協定に基づいてブラジル政府が温室ガス抑制に向けて取るべき対策をまとめた報告書を出す予定だった。

(サンパウロ綾村悟)