次期大統領選へ動き出す米政界
支持率低迷続くオバマ大統領
原油価格が下落し米経済の回復が顕著になっているが、オバマ米大統領の支持率は依然低迷状態だ。オバマ大統領のレームダック化を背景に、米政界の関心は次期大統領選に移りつつある。(ワシントン・久保田秀明)
独走のクリントン氏 過去の実績裏目にも 民主党
ブッシュ氏が有力か 女性候補者推す声も 共和党
オバマ大統領は2017年1月に2期8年間の任期を終える。それまであと2年だが、1年後にはアイオワ党員集会を皮切りに大統領予備選プロセスが始まる。民主党も共和党もポスト・オバマに向けて本格的な準備態勢に入った。
12月29日に、米CNNテレビと調査機関ORCによる2016年大統領選をめぐる世論調査結果が公表された。それによると、民主党では、大統領夫人、上院議員、国務長官を経験してきたヒラリー・クリントン氏(67)が66%の圧倒的支持を集めた。あとは、ウォール街批判を展開してきたリベラル派のエリザベス・ウォーレン上院議員(65、民主、マサチューセッツ州)が9%、現職副大統領のジョセフ・バイデン氏(72)は8%だった。これに対して、共和党はジョージ・H・W・ブッシュ元大統領の次男でジョージ・W・ブッシュ前大統領の弟であるジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事(61)が支持率としては23%を獲得し、首位に立った。あとは共和党知事連合の会長であるクリス・クリスティー・ニュージャージー州知事(52)が13%、著名な医師で黒人保守派のベン・カーソン氏(63)7%、マイク・ハッカビー前アーカンソー州知事(59)6%、ランド・ポール上院議員(51、共和、ケンタッキー州)6%という結果だった。
民主党も共和党もまだ正式に大統領選に出馬している候補はいない。しかし春にかけて続々と出馬表明が予想されている。民主党では、世論調査結果にも示されているように、クリントン氏が知名度も圧倒的に高く、支持率という点ではほぼ独走態勢だ。
これとは対照的に、共和党は本命不在で、有力候補として名前が上がっている政治家は、テッド・クルーズ上院議員(44)、マルコ・ルビオ上院議員(43)など20人以上いる混戦状態が予想されている。ただ、その中でも最有力視されているのは、ブッシュ氏である。ブッシュ氏は12月16日にフェイスブックで大統領選出馬の可能性を「前向きに検討する」と表明。12月末には企業や団体の役員職から全て退き、出馬に向けての準備を着々と進めている。ブッシュ家の看板からくる知名度もあり、大口献金者がブッシュ氏支持に動き始めている。共和党内の主流派を結集することができる政治家との評価も高い。選挙はクリントン対ブッシュの対決になる公算が強まっている。
民主党陣営でのクリントン氏の独走態勢は絶対的なように見えるが、選挙に絶対などない。あまりに早い時期に先頭走者になると攻撃の的になり、かえって不利との見方もある。クリントン氏は圧倒的に知名度があるが、それだけに同氏を嫌っている有権者も多い。ウォールストリート・ジャーナルとNBCニュースの12月の世論調査では、有権者の48%がクリントン氏には投票しないと回答している。クリントン氏は公職経験豊富だが、その分過去の実績が裏目に出るリスクも高い。
ブッシュ氏はフロリダ州知事時代に超党派的協力を推進して実績を上げ、州議会の民主党議員から尊敬されてきた。夫人はメキシコ系の女性で、自分自身もスペイン語を流暢(りゅうちょう)に話す。本選挙でいまや大票田を形成するヒスパニック系の有権者を引き付ける力が期待されている。課題は、共和党保守派の影響力が強い共和党予備選で勝ち残ることだ。ブッシュ氏は同姓婚や中絶には反対しているが移民制度改革では柔軟派であるため、移民問題で強硬姿勢を取る保守層を獲得できるか疑問視されている。
クリントン氏は、米国史上初の女性大統領誕生という歴史的快挙を狙える立場にいる。女性票が党派を超えてクリントン氏に集まることになれば、共和党にとっては不利だ。共和党も女性票の動きを注視せざるをえない。11月の中間選挙では、女性票は52%が民主党、47%が共和党に流れた。共和党はクリントン氏に対抗するために、女性候補を推す可能性も検討している。米コンピューター大手ヒューレット・パッカード元最高経営責任者(CEO)のカーリー・フィオリーナ氏(60)や共和党保守派のミッシェル・バックマン下院議員(58)などの名前が上がっている。「最もパワフルな女性」などと呼ばれてきたフィオリーナ氏は出馬準備を開始したとされる。