インスタプレイ、「祈り」でつながるSNS

 インターネット上で交流するソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)。新たな形態が次々に生まれる中、「祈り」でつながるユニークなSNSがある。2012年に米国で誕生した「インスタプレイ(Instapray)」がそれだ。個人的な悩みから国際問題まで、ネット上で互いに祈り合うことを通じ、さまざまな信仰を持つ世界各国の利用者が交流する場となっている。(ワシントン・早川俊行)

ネット空間に人間性を

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「祈り」でつながるソーシャルメディア「インスタプレイ」を設立したフリデリク・オブキャリクさん(早川俊行撮影)

 「台風に直面する日本人の安全を祈ります。神よ、天使を送ってお守り下さい。アーメン」

 これは台風19号が日本列島を縦断した際、フィリピンの女性がインスタプレイに寄せた祈りだ。また、イスラム過激派「イスラム国」の残虐行為に苦しむ中東の人々に神の加護を求める祈りも多い。

 フェイスブックやツイッターなど一般のSNSでも、自然災害や紛争に直面する人々の無事を願う内容が書き込まれるが、インスタプレイではより宗教的な表現がストレートに飛び交うのが大きな特徴だ。

 「現代のネット空間は人間性が欠けている」――。こう語るのは、インスタプレイを設立したフリデリク・オブキャリクさん(33)。フェイスブックは「いいね!」、ツイッターはフォロワー数が評価基準となり、利用者は他人にいかに好かれるかを競い合う表面的な空間になっていると、オブキャリクさんの目には映る。

 「人間を人間たらしめているのは、善意、支援、弱さ、信仰、悲しみ、失望、恐れ、涙などだ。だが、今のネット空間では心を開くことができない」

 オブキャリクさんが祈りでつながるSNSを始めたのは、信仰という深い部分で人々が交流できる場を提供したいと考えたからだ。利用者の中には、他の人々から寄せられた祈りや励ましで自殺を思いとどまった人もいるという。

 ネットは世界の人々を結び付ける一方で、いじめに利用されるなど弊害も目立つ。互いに祈り合うことを通じ、調和や愛情、思いやりを世界に広げることが、インスタプレイの目指す目標だとオブキャリクさんは語る。

 利用者の大半はキリスト教徒だが、ユダヤ教徒やイスラム教徒の利用者もいる。キリスト教徒が「イエスはあなたを愛している」と誰かを励ますと、「ムハンマドもあなたを愛している」とイスラム教徒が書き込むなど、宗派の枠を超えたやりとりが交わされることも。

 一方で、時には対立的なやりとりに発展することもあり、宗教間の和解が容易でない現実も実感させる。それでも、オブキャリクさんは「対話したことが始まりだ。お互いが相違を理解すればするほど、平和に近づく」と話す。

 インスタプレイはスマートフォン用アプリで、無料で利用できる(www.instapray.com)。オブキャリクさんはポーランド出身で、米スタンフォード大経営大学院在学中に設立。起業から2年で、利用者は世界約200カ国、約100万人に広がった。