山積する難題から現実逃避? オバマ米大統領、16日間の豪華バケーション

政治資金集め優先に批判も

 オバマ米大統領はイラク空爆作戦を開始した直後の9日から、就任後最長となる16日間の夏季休暇に入っている。国内外に深刻な課題が山積する中、一般庶民には手が届かない豪華バケーションを満喫中だ。休暇前も重要課題への対応より、政治資金を集めるイベントへの出席を優先するケースが目立っていた。支持率は低迷し、内政・外交とも思うように行かない現実から「逃避」(米メディア)しているかのようだ。(ワシントン・早川俊行)

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9日、休暇先の米マサチューセッツ州マーサズ・ビンヤード島でゴルフを楽しむオバマ大統領(左)(UPI)

 緊迫化するイラク情勢をよそに、オバマ氏は予定通り9日に休暇先の高級保養地マーサズ・ビンヤード島(マサチューセッツ州)入り。到着早々、大好きなゴルフを楽しんだ。

 オバマ氏は就任以来、大統領選のあった2012年を除き、毎年、夏季休暇を同島で過ごしている。今年の宿泊先は海岸沿いに建つ資産価値1200万㌦の豪邸で、民主党支持者の資産家から借りたという。部屋は17あり、プールやテニス・バスケットボールコートも付いている。

 国内外に難問が山積し、多くの国民が依然厳しい経済状況に苦しむ中、大統領が豪勢な家族旅行に16日も費やしていることに批判が出ている。米メディアによると、米国民の平均旅行日数は3・7日だという。

 大統領一家の豪華バケーションは夏季休暇だけではない。クリスマス休暇には大統領の出身地ハワイの超高級リゾートで過ごす。大統領一家が支払うのは自分たちの滞在費だけで、専用機「エアフォースワン」での移動費や大規模な警備費、随行するスタッフにかかる諸経費などはすべて税金で賄われる。

 大統領にも旅行や娯楽を楽しむ権利があることは国民も理解しているが、オバマ一家の贅沢(ぜいたく)ぶりは明らかに節度を欠いている。

 ワシントン・タイムズ紙の政治コラムニスト、ジョゼフ・カール氏は、選挙演説で強欲な富裕層や経済格差を非難しながら、自らは贅沢な生活を送るオバマ氏を「偽善」と断じ、「多くの勤労者が必死にやり繰りする中、オバマ一家は自分たちが贅沢な生活をしていることを全く意に介さない。彼らは他の人々より裕福な生活を送ることを当然の権利だと思っている」と批判した。

 オバマ氏に対する「職務怠慢」批判は、休暇前から上がっていた。重要課題への対応より、11月の中間選挙を睨(にら)んだ政治資金イベントへの出席を優先していたためだ。「ファンドレイザー」と呼ばれるこのイベントは、最大3万㌦以上の高額参加費を払った大口献金者とともに豪華な食事を楽しむというものだ。

 米国で現在、対応が急務となっているのが、貧困や犯罪から逃れるため中米から単身で不法入国する子供が急増している問題だ。オバマ氏は先月9日、メキシコに接するテキサス州を訪問したが、国境を視察するのを拒否。一方で、政治資金イベントには予定通り出席した。

 視察拒否の理由について、オバマ氏は「フォト・オプ(写真撮影の機会)には興味はない」と述べ、形式的な視察は無意味だと説明。だが、その前日、コロラド州で州知事とビリヤードに興じ、その写真はホワイトハウスのホームページにも掲載された。

 オバマ氏は国境視察よりもビリヤードのフォト・オプを重視したわけだ。この不誠実な行動は、身内の民主党議員をも「ビリヤードをする時間があるなら、国境まで行くべきだ」(ヘンリー・クエラー下院議員)と激怒させた。

 また、ウクライナでマレーシア航空機が撃墜され、イスラエルがパレスチナ自治区ガザへ地上侵攻を開始した先月17日も、オバマ氏はニューヨークでの政治資金イベントに出席している。

 どんなに深刻な国際問題が発生しても資金集めだけは欠かさないのは、今に始まったことではない。2012年9月にリビア・ベンガジの米領事館が襲撃され、クリストファー・スティーブンズ大使ら4人が殺害された翌日も、政治資金イベントのためにラスベガスに飛んでいる。

 ワシントン・ポスト紙によると、就任から先月26日までに出席した政治資金イベントは399回に上る。5年半で既にブッシュ前大統領の328回を大きく上回っている。

 山積する課題から逃避しているようにも見えるオバマ氏の行動について、ワシントン・タイムズ紙のオンライン論説エディター、モニカ・クローリー氏はこう解説する。

 「オバマ氏は自分のことを救世主的な変革者だと思っているので、大統領としての日々のつまらない仕事は億劫なのだ」

 その上で、クローリー氏は「誰も大統領の休息やバケーションをねたんでいない。だが、この大統領は職務よりもくだらないことを優先することが多すぎる。誰であろうと何があろうと自分の予定を邪魔させないオバマ氏は、反抗的な若者のようだ」と、大統領としての未熟さを厳しく批判する。

 ジャーナリストのエド・クライン氏によると、オバマ政権1期目に国務長官として仕えたヒラリー・クリントン氏も「オバマ氏の悪いところは、(職務が)億劫になってることだ」と漏らしたことがあるという。