新型コロナウイルス 武漢研究所流出説は「妥当」
国立研究所が昨年報告書
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は7日、米国立研究所が昨年5月、新型コロナウイルスが中国・武漢ウイルス研究所(WIV)から流出したという説は妥当であり、さらなる調査を行う価値があるとする報告書をまとめていたと報じた。トランプ前政権が新型コロナの起源を調査する際に、これを参考にしたという。複数の関係者の話として伝えた。
同紙によると、機密指定された報告書を作成したのは、西部カリフォルニア州にあるローレンス・リバモア国立研究所の「Z部門」と呼ばれる情報部門。同研究所は生物学に関する豊富な知識を持っており、新型コロナの全遺伝情報(ゲノム)解析に基づき評価したとしている。
関係者は、報告書の内容が研究所から流出した可能性について追加の調査を行うよう強く主張していたと同紙に伝えた。国務省当局者は昨年10月下旬にこの報告書を受け取り、さらなる情報を求めたという。
また同紙によると、この報告書は、米政府が新型コロナの研究所流出説と自然発生説について、真剣に調査した最初の取り組みの一つだという。
国務省は今年1月に発表した文書で、2019年秋に武漢研究所の複数の研究者が新型コロナとインフルエンザに似た症状を発症したと信ずるに足る証拠があるとしていた。また同文書は、遅くとも17年には人民解放軍がWIVに研究資金を提供し、動物実験を含む極秘の研究を行っていたとも指摘。その上で「武漢の研究施設への完全かつ透明な立ち入り検査が必要」だとして、研究者への聞き取り調査や職員の健康記録の調査の必要性を訴えていた。
バイデン大統領は先月下旬、米情報機関に対して、新型コロナの起源について追加の調査を行い、90日以内に報告するよう指示。この中で、国立研究所などによる情報収集の取り組みの強化を求めていた。
(ワシントン・山崎洋介)