米人権報告書 ウイグル弾圧は「ジェノサイド」


香港統制強化も非難

 米国務省は30日、各国の人権状況に関する2020年度版の報告書を発表し、中国の新疆ウイグル自治区でウイグル族らへの「ジェノサイド(集団虐殺)や人道に対する罪があった」と厳しく非難した。中国政府による香港への統制強化についても、「中国共産党は、国際的な公約に違反して、香港の政治的自由と自治を組織的に解体した」と指摘した。

 報告書では、新疆ウイグル自治区で100万人以上のウイグル人らイスラム教徒の少数民族が収容所に勾留され、強制的な不妊手術や中絶や性的暴行が行われているほか、宗教の自由が厳しく制限されていると指摘。また、新型コロナウイルスの感染が拡大した中国湖北省武漢市で、その状況を報道していた4人の市民ジャーナリストが行方不明になり、そのうち1人はその後、裁判で4年の禁錮刑を言い渡されたことも問題視した。

 香港については、昨年6月に施行された「一国二制度」を骨抜きにする国家安全維持法などを挙げ、「中国は、年間を通じて市民の自由と民主主義制度を損なう取り組みを加速することにより、香港の自治権を弱体化させた」と批判した。

 このほか韓国については、昨年12月に北朝鮮を非難するビラ散布などを禁止する法律が成立したことが、「表現の自由の制限」だとして、重要な人権問題の一つとして取り上げた。

 ブリンケン国務長官は会見で、中国の人権問題について「国際ルールに基づく秩序への攻撃」だと非難。中国政府が人権問題を追及する欧米諸国に対して制裁を科していることについては、「中国政府の人権侵害についての他国の懸念と注目を高めるだけだ」と指摘した。