アマゾン熱帯雨林 半世紀以内に消失も


英研究チームが警告

 英科学誌「ネイチャー」のオンラインジャーナル「ネイチャー・コミュニケーションズ」は10日、「アマゾン熱帯雨林が消失する臨界点が近づいている」と分析する研究論文を掲載した。

 論文を執筆したのは、英バンガー大学のサイモン・ウィルコック氏をはじめとする研究チーム。ウィルコック氏らは、論文で「アマゾン熱帯雨林は人類の想像以上に脆(もろ)い存在で、半世紀とかからずに消失してしまう可能性がある」「臨界点は早ければ来年にも訪れる」などと警告している。

 「臨界点」を超えると、アマゾン熱帯雨林が自己再生能力を失い、森林崩壊と同時に地域の気候変動に不可逆的な変化をもたらすとされている。

 アマゾン熱帯雨林の25%(一説には35%)を失えば、臨界点を超えるとの研究もあり、これまでの調査では、違法伐採や旱魃(かんばつ)の影響などで1970年代と比較して17~20%近くの森林がすでに消失しているという。

 アマゾン地域では、15年間で3回もの深刻な旱魃に見舞われている。研究者からは「アマゾンは、すでに亜熱帯性気候からサバンナ気候へと転換する気候変動の入り口にある」との指摘も出ているほどだ。

 ブラジルの国立宇宙研究所(INPE)は先月、アマゾン熱帯雨林の20%が二酸化炭素の吸収力を失っているとの衝撃的な調査結果を発表した。

 「地球の肺」にも例えられるアマゾン熱帯雨林だが、地球温暖化抑制の「緩衝帯」としての機能が失われつつあり、多くの研究者が「政府主導による厳格な森林保護が求められる」と主張している。

 ウィルコック氏の論文は「アマゾンが崩壊した場合、膨大な二酸化炭素が大気中に放出されるだけでなく、数多くの植物や動物が絶滅し、人類は森林から得てきた膨大な遺産を失うことになる」と警告している。

 一方、同じ論文の中で、研究者らはカリブ海のサンゴ礁にも言及し、サンゴ礁の消失が「臨界点」を超えた場合、15年以内に死滅する可能性があると指摘している。

(サンパウロ 綾村悟)