中国、米大学で知的財産を窃盗
米上院の委員会は18日、報告書を発表し、米政府から研究費を得ている中国人研究員らが、米大学・研究機関から知的財産を盗み出していると警告。その結果、米国民の税金が中国の経済、軍事力を高めることに利用されていると非難した。
上院常設調査小委員会による超党派の報告書は、FBIは2016年段階で中国の支援を受けた研究員のリストを持っていたにもかかわらず、18年までリストを他の機関と共有しなかったと指摘。「こうした失敗が米国の研究活動の健全性を損ない続け、国家安全保障を危険にさらしている」として、早急な対応を求めている。
報告書によると、中国は国内外で研究者を集めるために200以上の計画を持っており、中国共産党による人材獲得プログラム「千人計画」もその一つ。中国人研究者がこうしたプログラムへの関与を故意に隠蔽(いんぺい)しつつ、米政府による資金提供を受けている例を報告書は提示している。
例えば、エネルギー省からの資金提供を受けたある研究者は、中国に帰国する際に研究成果などが入った3万件以上もの電子ファイルをダウンロードして持ち去った。また、軍事転用可能な科学分野で働く大学教授が、米国の輸出管理規制を受けずに、研究結果を中国に持ち帰っていたとする。
委員会が入手した千人計画の合意文によると、研究者らに中国共産党との関係は隠し、研究結果を中国人の監督者に渡すことを約束させている。中国内に「架空の研究所」を設置し、研究者らを取り込むことを求めるケースもあり、「マルチ商法」に似ていると報告は指摘する。
報告書は、米政府に「米国の知的財産の違法な移転に対抗するための包括的な戦略を開発する」ことを要求。情報を窃取する可能性のある研究員のビザ申請の精査や、大学との情報共有が必要だとしている。
同小委員会の議長であるポートマン委員長(共和)は、「米国の納税者は意思に反して、20年間にわたって中国の経済と軍事の発展を支援してきた」と政府の対応の遅れを非難。19日にこの問題について審議を行うことを予定している。
(ワシントン 山崎洋介)