ロシア機墜落、テロか事故かの判断回避
エジプト政府 慎重姿勢を崩さず
ロシア機のエジプトのシナイ半島での墜落をめぐりエジプト政府調査委員会は7日、記者会見し、ボイスレコーダーの録音の最後に「雑音が残っていた」と説明したものの、それが何によるものかについては言及を避け、テロか事故かの判断を回避した。(カイロ・鈴木眞吉)
ロシア政府もエジプト政府も事故直後は、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の犯行声明にもかかわらず、「プロパガンダだ」(シシ・エジプト大統領)、「事故究明を待つべきだ」(プーチン・ロシア大統領)などと発言、事故がテロと結び付けられることへの警戒感をあらわにしていた。
ロシアにとっては、大統領のシリア内戦軍事介入決断がテロを呼び、自国民の大量虐殺につながったことを認めるわけにはいかない。エジプトにとっては、空港での治安体制の不備が批判され、観光客が激減することへの警戒感がある。
当初は、地上から撃墜するには高度が高すぎるという理由から、テロ説に否定的な見方が支配的だった。
しかし、風向きが変わり始めたのは、現地入りした航空専門家が、20平方㌔もの広範囲にわたって機体の破片が散乱していることを論拠に、機体は「空中分解した」としてから。
爆破テロへの疑念が急速に強まったのは、米当局者が4日、ISか系列組織が機内に持ち込んだ爆弾が爆発した可能性があると指摘、英国のハモンド外相が同日、機内に持ち込まれた爆弾の爆発による可能性が高いとの見解を表明してからだ。
米国の情報機関がIS活動家間の会話を傍受して得た情報などが源とされる。
ISの関連武装組織も同日、「ロシア機を墜落させたのは我々だ」との2回目の犯行声明を出した。
決定打となったのは、仏紙が「ブラックボックスで機内の爆発音」などと報じ、仏国営テレビが6日、ブラックボックスを解析した欧州の専門家の証言として、機内で爆発音が確認され、それ以前には事故の兆候を示すデータは無かったと報じたことだ。
AFP通信は、調査関係者の話として、機体の破片の様子などから、内部から外に向かっての強い衝撃があったとみられる、との指摘も伝えた。
英国の発表に対し、事故調査の終了まで待つべきだとキャメロン首相に発言していたプーチン大統領は6日、ロシアの航空会社のエジプト便全便の運航停止を決め、方針を転換した。8万人ともされるシナイ半島滞在中のロシア人が帰国を急いでいる。
エジプト政府調査委員会は7日、爆発音とされる音を「雑音」とだけ発表、テロとの関連に慎重な姿勢を示した。しかし、同委員の一人は匿名でロイター通信に、「雑音は爆発音だと我々の9割方が確信している」と発言、調査委員会はそれに対し、「雑音の原因は特定されていない」と改めて否定するなど、慎重姿勢を維持している。