シリア内戦、露の軍事介入鮮明に

 ロシアはシリア国内における軍事力の増強を続けており、ロシアによるシリア内戦への軍事介入の可能性がますます高まっている。(カイロ・鈴木眞吉)

外交攻勢も活発化

来週にも米露首脳会談

800

23日、モスクワで握手するトルコのエルドアン大統領(左)とロシアのプーチン大統領(AFP=時事)

 14日の時点では、シリア西部ラタキアの空軍基地には、戦車や大砲が配備されてはいたが、まだ、戦闘用のジェット機やヘリコプターは配備されていなかった。しかし、米当局者は16日、ロシア軍のヘリコプター4機が同基地に到着したことを確認。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは18日、同基地にロシアの戦闘機少なくとも4機が到着した、と報じた。戦闘機の配備は初めてで、同紙は、「ロシアがアサド政権への支援に、軍事力を使う準備をしていることを明確に示すものだ」としている。

 さらに米当局者は21日、ロシアが同基地に計28機の戦闘機と爆撃機を配備していると認めた。戦闘ヘリコプターと輸送ヘリコプター計20機も配備され、シリア上空で無人機の運用を開始しているという。ロシアが配備したのは、スホイ24戦闘爆撃機12機、スホイ25攻撃機12機、スホイ27戦闘機4機とされる。

 国際軍事情報大手IHSジェーンズは22日、人工衛星画像の分析結果として、同基地北方に新たに軍事施設2カ所の建設を進めているもようだ、と発表した。駐留の準備とみられ、米政府は、ロシア軍がシリア内戦に直接介入する可能性もあるとみて、警戒を強めている。クリミアの中東版を警戒しているとの見方もある。

 一方、ロシアによる外交攻勢が活発化している。

 シリアのムアレム外相は最近、必要とあればロシア軍の派遣を要請する考えを示唆、ロシアのぺスコフ大統領報道官も、「要請があれば検討する」と発言して、アサド大統領退陣を求める欧米を牽制(けんせい)した。

 ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相と米国のカーター国防長官は18日、1時間に及ぶ電話会談を行い、ウクライナ危機により過去18カ月間に及んだ両国の軍事協力の凍結を解除し、軍事対話を再開した。シリア問題で軍事衝突など不測の事態が起きないよう、双方が協議を行うことで合意した。その中でショイグ氏は、「シリア政府と交わした誓約を守るための防衛的性格のものだ」と説明したという。

 ケリー米国務長官は19日、アサド大統領の退陣を求めた。また、シリアにおけるロシア軍の軍事力増強が、過激派組織「イスラム国(IS)」掃討に焦点を当てていることを歓迎した。

 米露とも、IS掃討を目標としているものの、アサド政権に対する姿勢は異なっている。ロシアはアサド政権をISの防波堤と見なしているのに対し、米国は「アサド政権はシリア市民を迫害して内戦の原因をつくり、ISの台頭を許した」として非難している。

 プーチン大統領とイスラエルのネタニヤフ首相は21日、モスクワで会談した。首相は、両国が「シリア内における軍同士の誤解を防ぐための共同の仕組み」で合意したと説明した、首相は、シリアがヒズボラに高度な武器を供給する懸念を訴えたもようだ。プーチン大統領は「シリアがイスラエルと戦うことは無い。ロシアは中東で責任ある行動を取る」と強調、自身が提案する「アサド政権を中心とした対IS共同戦線」の構想を説明したもようだ。

 プーチン大統領は23日、トルコのエルドアン大統領ともモスクワで会談、対IS共同戦線への参加を呼び掛けたもようだ。

 米露首脳は、ニューヨークでの国連総会に合わせ、来週、会談を予定しているという。実現すれば、ウクライナ危機開始以来初めてとなる。ISとの戦いやシリア情勢が最大の議題となるとみられ、会談の行方が注目される。