韓国社会の外国人差別、KBSが注目し雑誌に反響

「多文化社会」に遠い実態

 韓国でもテレビで「外国人タレント」を見ない日はない。「韓国が『多文化社会』に入った」といわれる所以だ。「多文化社会」とは、韓国に入ってきた異文化、異人種の人々と共存、共生していく社会のことだ。

 しかし、流暢(りゅうちょう)な韓国語を操る白人がワイドショーのMCを務めたり、俳優や芸能人として活躍しているシーンは、「韓国テレビ界の国際化」は表しているものの、韓国社会自体の国際化を示すものではない。

 日本以上に「単一民族」の韓国人は、日本人以上に「外人」への偏見が強く、しばしば人権問題を引き起こしている。その対象はフィリピン、ベトナム、カンボジアなど「非白人」であり、彼らへの差別感が社会的問題として浮上しているのだ。

 「月刊朝鮮」(6月号)に林度京(イムドギョン)・地域文化疎通研究院院長が「『隣の家のチャールズ』が示す韓国の自画像」を書いていて興味深い。

 韓国のテレビに「外タレ」が登場してきたのは、2006年から2010年までKBSで放送された「美女たちのおしゃべり」からだ。「日本人サユリ、イタリア人クリスチーナ、英国人エバ、中国人・孫瑤」ら「外国人美女」が出演して、韓国男性芸能人と他愛もない話をするトークバラエティーだ。

 そこには「国家間利害とまったく関係なく形成される『国民感情』が別にある」と林院長は指摘する。何かといえば、たとえ対日関係が悪くとも、「タレント日本人サユリ」への拒否感や抵抗感にはつながらないということだ。

 だが、これはいわば初期段階の「多文化」化といっていい。「善男善女」が華やかに韓国文化や社会との出会い、衝突を話していればよかった。しかし、韓国社会の国際化の実態は違った。今年から始まったKBSの「隣の家のチャールズ」は「第三国出身居住者の暮らしの悲哀を込めた」番組だ。

 「田舎の年老いた未婚男性に嫁に来たベトナム妻、3K業種に就く朝鮮族(韓国系中国人)で始まった外国人長期滞在者数は今年3月現在109万9955人(法務部)を記録」し、「最も多いのは朝鮮族(37万8000人)、続いて中国人、ベトナム人の順で10万人以上の数を記録している」という。

 彼らの目に映った韓国人、韓国社会とはどういうものか。林院長は個別のインタビューを行っている。

 「自分たちの文化を押し付ける」(中国留学生)、「韓国のものが最高と自慢し、宗教的禁忌を無視して強要する」(インドネシア妻)、「完全な韓国人になれと迫る」(日本人妻)、「国の水準が低いといって侮辱する」(朝鮮族)、「米国人を好み、中国人を嫌う」(中国留学生)、「英語ができるのに、白人ではないからとして、英語教師になれない」(フィリピン妻)、「食卓から立つ、電車の座席から逃げるなど露骨に避ける」(コンゴ留学生)。

 韓国は外交では中国を大国視し、その動向に敏感だが、中国人や特に朝鮮族に対しては、「生活レベルが低い」といって侮辱し、何かにつけて「後進国」扱いをしている。その一方で、反米軍基地運動をしながら、米国人を無条件に好む。「これが彼らの目に映った率直な韓国の姿」と林院長は述べる。

 ただ、「大学生を対象にした多文化意識調査では、大学生が一般成人に比べて、外国人に対してはるかに“中立的”であることが確認できた」(林院長)という。どの社会でも若者のほうが柔軟である。世代交代と外国人の流入によって、韓国の「多文化」化も内実が伴ってくるのだろう。

 ただ、儒教そのものが異端を排除し、同化を求める思想である。「韓国人のように考え、韓国人のように生活する外国人のいる社会」を多文化社会とは言わない。そのことに韓国人自身は気づくのだろうか。

 編集委員 岩崎 哲