自衛隊行事に反日過激化
「集団的自衛権」で軍隊視
7月、韓国ソウルのロッテホテルで行われる予定だった「自衛隊創立記念日」行事が突然キャンセルされた。一国の政府を代表する大使館が行う行事を前日になってホテル側が一方的に断るとは前代未聞のことだった。
しかも、この記念行事は毎年行われ、問題なく続けられてきたもの。ホテルが断るにはそれ相応の理由がなければならないが、ドタキャンの理由は「安全が確保できない」というものだった。
韓国内で高まる反日気運の中で、行事予定が韓国メディアによって報じられたことで、反日団体などの抗議がホテルに殺到していた。「爆破予告」もあったというから、行事を強行すれば、多くの外交団、武官らを含む参加者に不測の事態が予想されたわけだ。
同ホテルは「顧客の30%が日本人」といわれ、本体のロッテは在日韓国人が日本でスタートさせ成功させた企業で、同社とすれば「日本を敵に回す」ような措置は“苦渋の選択”だっただろう。
別の見方をすれば、「ビジネスの信頼」を破り、上得意の日本人を怒らせてでもロッテがキャンセルしなければならなかったほどに、韓国内の反日が強く、かつまた過激になっているということである。
「月刊朝鮮」(8月号)の呉東龍(オドンリョン)記者による「日本『自衛隊の日』行事に行ってみた」という記事は韓国側からこの騒動がどう見えているのかを伝えている。
行事は会場をホテルから日本大使館に移して予定通り行われた。韓国メディアの日本担当記者には「招待状」が送られている。呉記者は「10年前から参加してきた」というほど、定着した例年行事である。
式は大使の挨拶と乾杯、しばしの歓談で呆気なく終わる程度のもので、呉記者にすれば、「韓国の国軍行事なら軍歌の一つも出るだろうが、日本のは『君が代』や軍歌もない」ほど“水っぽいもの”に映っていた。これが「デモで汚された『政治行事』になるとは、誰も予測できなかった」と述べる。つまり、問題化するような行事ではないと思っていたということだ。
だが、今年は、毎年参加していた軍元老の白善燁(ペクソニョップ)元陸軍参謀総長(予備役陸軍大将)、韓日親善協会の金守漢元国会議長(セヌリ党顧問)など軍、外交、国会関係者も姿を見せなかったという。
国防部はこれまで部長級(少将クラス)を出していたが、今回は「実務課長級」に格下げして、最低限の「外交的欠礼」を避けただけだ。
なぜ、これほどまで問題になったのだろうか。その理由を呉記者は「日本政府が『集団的自衛権』の行使を閣議決定してから、(自衛隊記念)行事の意味が180度変わった」とし、「既存の安保原則を破棄して、『戦争のできる国』に変革した戦犯国日本が軍隊創設記念式を戦争被害国のど真ん中でするとは話にならない、ということだ」と伝えた。
集団的自衛権行使は国連憲章で認められた権利であり、ひとり日本だけが制限される謂れはない。しかも、日本側の理解では、集団的自衛権行使は朝鮮半島有事の際、韓国を支援する体制をつくるためのものだ。
だが韓国側はそうはとらない。日本は「反省も十分でないままに『戦争のできる国』へ突き進んでいる」と警戒感を強くするのだ。韓国の言う「反省」とは「従軍慰安婦」であり「歴史認識」のことだが、これは平行線のまま、相互に理解しあう気持ちはないのが現状だ。
呉記者は、「岸信介総理が水面下で過去を反省して、韓国との関係回復に努めた事実を再確認しなければならない」という「元外交官K氏」の言葉を引用する。韓国の不信もさることながら、日本側の説明、信頼を得る努力も必要だと促しているわけだ。この記事は、韓国側が日本のアクションを待っているというサインの一つでもあるが、従来の主張を譲る気配はまったくない。
編集委員 岩崎 哲





